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教員コラム

2019.01.09 - コミュニケーション学科  デジタルネイチャー環境で育ったデジタルネイティブな学生への教育を考える

わたしはコミュニケーション学科で科目「ロボット・コミュニケーション」を担当し、履修学生に人工知能とロボットの共生時代に人間と人工知能とロボットとがいかなるコミュニケーションの可能性を切り開くことができるかを学んでもらっています。実は、この科目を開講する4年前に人工知能とロボットとの共生時代を身近に感じてもらおうと世界初と言われていた感情認識人型ロボットのペッパーを購入し、一緒に生活する体験を通して人間とロボットとの心的関係性と相互依存性について講義する準備をしました。

そして始まった講義では、折に触れてペッパーとの暮らしの中で起きた面白いハプニングを含めて話します。すると学生たちは笑いながらも強い関心を示してくれます。もちろん、面白い話をするだけではありません。「これから10年後の人工知能とロボットが仕事や日常生活に導入された社会では、これまであった仕事(専門知識を必要とするものやルーティンワークを主とした単純作業の仕事など)の49%がなくなると言われています。そのために皆さんはどうすればとよいと思いますか」と問いかけもします。すると彼らは不安げな表情を浮かべますが、何かを考え始めたようにも感じるのです。もちろん、何かを考え始めることが狙らいです。

この講義をきっかけとして〈生きて行く上で想定外のことが起こったとしても、自分の力で解決できるようになってもらいたい〉との思いもあって、最終講義では、「人間と人工知能やロボットとの違いは、何もないところから何かを生み出せるかどうかです。そのためには自分の頭で考え行動できる自立したクリエイティビティ(創造力)を身につけることが大事です。そのクリエイティビティが人工知能とロボットとの共生時代を生き抜く術となるでしょう」と話を締め括くります。

ただ、クリエイティビティを身につけてもらうことでは、わたしが30年以上も前から教育現場で実施している人間の身体の五感をフル稼働させて取り組むオリジナル映像作品制作があります。そして「ロボット・コミュニケーション」と並んで担当している「映像コミュニケーション」でも同様にオリジナルの映像作品を制作してもらっています。この五感をフル稼働させて生み出すものをデジタルネイチャーに対してアナログネイチャーの産物という言い方ができるとすれば、この「映像コミュニケーション」はアナログネイティブな学生向きだと考えることができるかもしれません。しかもこの両科目は対立していると。

しかし、実際には両科目は対立するものではなく、わたしはデジタルネイチャーもアナログネイチャーも同時に謳歌できる能力こそがクリエイティビティであると長年学生たちと向き合って来た中で感じています。

[参考]

2018年9月13日に行った小学生向きのロボットプログラミングと操作の公開授業風景。実際にロボットを目の前にした授業で児童たちは、ロボットの動きに興味津々でした。

[参考]

新たな外国語教育のために人工知能を利用したオンライン翻訳サイトや同時通訳機器の有効活用の実践をしています。海外に行って使用調査も行っています。台湾(台北)で同時通訳機器を使った調査では画質が悪いのですが互いに同時通訳機器を使って会話しています。こういった会話をベトナム(ハノイ)でも経験しました。ロシア(ウラジオストク)では、ロシア語のみでしか会話できないことが多々あり同時通訳機器がなくては意思疎通できないことがありました。