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教員コラム

2020.01.09 - コミュニケーション学科  2019年を「不都合な真実の場」で振り返る

(1)
2月から3月にかけて映像による「新たな視覚の発見」をテーマに、小型特殊カメラ(360°カメラ、オスモ・ポケット、小型ドローン)を用いて、鳥取砂丘撮影のために鳥取市と流氷撮影のために北海道オホーツク沿岸の紋別漁港、網走漁港、羅臼漁港などの漁港を訪れる。撮影した映像を用いて映像表現の可能性をテーマに映像関連の担当科目で使う。

(2)
5月には、担当科目「ロボット・コミュニケーション」で、ビックデータの解析事業や人工知能を用いた予測事業を行う株式会社ROXの代表取締役・中川達生氏をゲスト講師に招き、インターネット上のサービス利用によって決められる個人の信用格付けや人工知能がもたらす仕事について3回にわたり講義をしてもらう。全体の講義終了後に、2030年は人工知能とロボットがもたらすベイシックインカム、あるいは軍事用兵器問題が人類破滅への分岐点になるといわれているが、それらが抱えている問題の解決について考えるだけではなく、具体的な行動をいかに起こせるかを未来課題として出す。

(3)
6月には、担当科目「言語・身体・メディア・コミュニケーション」で、街のヘンなモノの投稿で有名な『VOW』(宝島社)の総本部長と宝島社の名編集者をゲスト講師に招き、人工知能にはできない編集企画について話してもらう。この講義の様子は女性ファッション雑誌『sweet』9月号(宝島社)に見開きページで紹介される。

(4)
7月には、「日本は多様化している~Japan is Changing~」と題したイベント(会場:横浜市金沢公会堂 協力:ユナイテッドピープル株式会社)を企画し、担当するプロジェクト科目4の履学学生25人が参加する。企画意図は、「厚生労働省の統計では日本の新生児の49人に1人が日本人と外国人の間に生まれているとする現状」、「同調圧力が強く多様性を認めない日本の組織、集団、社会にあって、ハーフが抱えている問題解決に向けていかなる行動ができるか」について考えてもらうこと。イベントでは、日本の多人種・多文化社会における人種、多様性、多文化、国籍やアイデンティティなどの問題点を扱ったドキュメンタリー映画『Hafu(ハーフ)』(内容は、ハーフであるとはどういうことなのか、日本人であるという意味は、ハーフは日本にとってどういう意味を持つのか、を問う)の上映。ハーフをテーマに履修学生が制作したオリジナル映像作品の上映。監視カメラと人工知能による超監視社会の中で個人の自由とは何かについて積極的孤独の視点で捉えた朗読劇『ドローン、カナリア、スマホ』を上演。同時通訳デバイスのポケトークを用いて異言語間の言葉の障壁を越える可能性についてのプレゼンテーションを行う。

(5)
8月には、ベトナム国家大学ハノイ校日越大学が主催したVJU Summer Program 2019への参加のために学生11名を引率してハノイを訪れ、ベトナムの歴史、文化、現在の産業について体験的に学ぶ。なお、プログラム2019で公私にわたりお世話になったのが、日越大学事務局の山口昌志氏。山口氏は、JICAの職員でもあり、「光秀の友――吉田兼和」で第4回 「決戦!小説大賞」(講談社主催)を受賞した作家でもある。他に、1945年8月15日、第2次世界大戦(大東亜戦争)終結後、約800人の日本軍将兵が進軍していたベトナムに残り、その多くがベトナム独立のためにインドシナ支配を目論むフランス軍と戦ったインドシナ戦争(1946年~1954年)に参戦。さらに、その日本軍将兵の中には、ベトナム戦争(1955年~1975年)でアメリカ軍と戦ったこと。さらに、ベトナム戦争で韓国軍が行った民間人虐殺を記憶し、犠牲者を鎮魂するために「ベトナム人の母子の像」(「ベトナムのピエタ」像)が作られ済州島に設置された経緯や、その「ベトナム人の母子の像」の作者であるキム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻は、「少女像」(従軍慰安婦像)も制作していることを通して、「戦争とは何か」、「弱者とは何か」、「平和とは何か」についても学ぶ。

(6)
12月には、横浜学生短編映像作品上映会2019(協力:株式会社エデュイットジャパン、イメージ・コミュニケーション)を横浜シネマ・ジャック&ベティで行う。第11回目となる今回のテーマは、「地球温暖化」。担当する講義で、上映会2019に参加する履修学生に、まず、ドキュメンタリー映画『不都合な真実』(監督:アル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領)を参考に地球温暖化についての認識を深めてもらう。次に、世界中で起きている異常気象は地球温暖化が加速していることに原因があり、「10年後に地球の温度が+1.5度になれば、地球は後戻りできないまま灼熱の星になる」とされる現状について考えてもらった。さらに、2030年には地球温暖化だけではなく、人口爆発、水・食料問題、人工知能とロボット・テクノロジーによって人類が破滅に向かう分岐点になるとされていることを念頭に置き、履修学生が、地球温暖化の解決への糸口を表現するためにオリジナル映像作品制作に取り組み、完成した29作品から11作品を選び上映する。

※横浜学生短編映像作品上映会Twitter:https://twitter.com/kusunoki_kgu

※横浜学生短編映像作品上映会2019の様子 撮影:鎌田沙帆(楠ゼミ2年生)