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教員コラム

2015.12.03 - 共生デザイン学科  2015年度人間環境デザイン学科「フィールドスタディ」報告

人間環境デザイン学科の設置科目「フィールドスタディ」は毎年、学科教員が持ち回りで担当し、それぞれの専門分野、興味や関心に応じて学生にぜひ体験し見聞を広めてほしいと考える現場(フィールド)に出かけてゆきます。それは国の内外を問いません。2015年度の担当者になってフィールドに選んだのは、大分県別府市。去る9月11日から13日まで学生13人とともに訪れました(写真1、2)。

源泉数、湧出量とも全国随一、湯けむりの町として知られるとともに、大正から昭和初期にかけては公共施設、学術施設、財界人の別荘、私邸など、現在は老朽化による保存保護の問題を抱えてはいますが、文化の香り高い近代建築が建てられたことでも有名です。そして戦後は高度経済成長の波に乗り、昭和30年代以降大型温泉観光地として繁栄してきました。

ところが近年は、企業環境やライフスタイルの変化とともに往時の賑わいが失われ、同時に中心市街地の空洞化や若者の定住離れもすすみ、魅力ある地域づくりが最重要課題になっています。こうした状況はいまや別府に限ったことではありませんが、路地裏散策やウェルネス産業推進に取り組むNPO、学生によるまちづくり団体、文化芸術振興を担うアートNPO等の活動によって、単一の価値観ではなく、多様性を受け入れ、変化に対応できる地域社会を支える文化基盤の創出が図られようとしています(写真3)。

その取り組みを加速させる原動力となり、国の内外からも注目されているのが、2009年より開催されてきた別府現代芸術フェスティバル《混浴温泉世界》です(写真4)。トリエンナーレ方式で開催され、今年はちょうど第3回の実施年にあたりました。「フィールドスタディ」ではこのチャンスを捕らえ、テーマを「アートプロジェクトにみる、わたしたちの『これから』」としました。

さまざまな優れた芸術表現活動を別府という土地に招き入れ、忘れ去られ置き去りにされてきた場所の魅力を発見し、その力を解放させ、そして創造的な土地へと変質させていくこと、これが《混浴温泉世界》の挑戦です。「混浴」などというと眉をひそめる人、面白がる人、その反応はさまざまでしょうが、つまりメタファー(隠喩)としての多文化共生です。

現地では招聘作家による作品をまち歩きをしながらめぐる「アートゲートクルーズ」、まちを劇場に別府の不思議な夜を照らしてゆく「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」に参加しました。また総合プロデューサーの山出淳也氏、総合ディレクターの芹沢高志氏の御協力を得てトークイベントも実施しました(写真5)。

こうした数々の体験に学生たちはどんな応答をしてくれるでしょうか。いま報告書を作成してもらっているところです。

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1. 宿泊した貸間旅館「大黒屋」集合写真
(別府・鉄輪にて)
2. 手湯をたのしむ学生たち(別府駅前にて)
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3. 路地散策で見つけた琺瑯製案内板
(別府・鉄輪にて)
4. マイケル・リン《無題》(「混浴温泉世界2009」出展作品、
現在も築100年の木造建築内に設置される襖絵、筆者撮影)
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5. 総合プロデューサー、総合ディレクターのトークを聴く学生たち (別府市内のカフェにて)

山﨑 稔惠(共生デザイン学科)