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教員コラム

2013.05.09 - 共生デザイン学科  フィールド・スタディ〜カンボジアの社会復興と絹織物の再生プロジェクトをめぐって〜

共生デザイン学科では、「身近な暮らしを見つめ直し、そしてデザインする」という考えのもとに、現在進行形のフィールド(現場)に赴き、現地の人や地域、プロジェクトから学ぼうとするフィールド・スタディという実習授業を設けています。
そこで2012年12月22日から28日までの7日間、共生デザイン学科の「フィールド・スタディ」研修先として、今回はカンボジア王国、シェムリアップを訪ねました。今回の研修での最大の目的は、カンボジア伝統織物の再生に取り組む村(受け入れ先:IKTT:Institute for Khmer Traditional Textiles :クメール伝統織物研究所)を訪れることにあります。(写真1)

写真1

「織物を織る」という営みにはいくつものプロセスがあり、それらがその土地の自然環境や人々の手仕事と深く結び付いて発展してきています。カンボジアにも伝統的な織物を生産する技術がありましたが、不幸なことに過去20年にもわたる内戦の歴史は、この国の自然環境も人々の暮らしや命までも奪ってきました。本来そこにある生態系が復活することによって、絹糸をはく蚕、そして蚕の餌となる桑の木、また絹糸を染め上げる草木や昆虫の巣・・・という絹織物の素材そのものが再び手に入るようになることを意味します。
また平和で安定した暮らしがあって初めて、人々が糸を紡ぎ、染め上げ、織りあげてゆくという手仕事に専念できるのです。つまり、一枚一枚の織物が出来上がるためには、自然環境と社会環境が「持続可能な形でありつづける」ということが前提条件となっているわけです。
今回のフィールドスタディへの参加学生は全部で11名。旅程に先立ち、何回かの事前学習会を設け、各自の問題意識の共有や、カンボジアという国に対する予備知識(歴史、産業、文化)の獲得に努めました。(写真2)

写真2

旅程は、前半にIKTTの活動する村に泊まり、村の成立やIKTTの理念の講義、染色体験のほか、村のそこここでおこなわれている紡ぎ、染め、織り、また道具づくり・・・などの村人の活動をじっくりと見せていただき、後半には地雷博物館、博物館、トレンサラップ湖での水上生活エリアや世界遺産として名高いアンコール・ワットなどを巡り、カンボジアという豊かな風土に育まれた人々の生活や文化、歴史を理解するものとした。
学生たちは片言のクメール語を村の子供たちに教えてもらったり、また活動内容への感想や質問などもそれぞれが積極的に行い、多くの実りを得たものでした。人がモノをつくり、暮らしてゆくということが、自然と社会との両輪のバランスの中で営まれているものであることに、学生たちも気づいてくれたと思います。(写真3)

写真3

立山 徳子(共生デザイン学科)