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教員コラム

2011.02.17 - 共生デザイン学科  街で見かけた「気持ちはわかるけど、、、」

私の専門「環境心理学」は、人に優しい環境を生み出すことを目的に、人間と環境とのかかわりを心理学の考え方や調査手法を用いて明らかにしようというものです。このような研究をしていると、街中を歩いていても、ちょっとした環境のしつらえが気になるものです。
たとえば下の写真、九州のある大学のキャンパス風景ですが、なかなか迫力のある車止めです(正確には自転車止めですね!)。うっかりすると歩行者まで通行してはいけないような錯覚を覚えるほどの、管理者の「気合」が伝わってくるしつらえです。ふとどきな自転車利用者との間に、長く、熱いバトルがあったのでしょうか。

某大学のキャンパスにて。すごい迫力です。

同じ車止めでも、こちらは機能していない、お気の毒な「車止め」です。福岡市内、実家の近所のスーパーマーケットの自転車置き場に設置してある車止めですが、いつ見ても車にぶつけられて、ご覧のとおり傾いた状態です(切り返しでバックする際にぶつける方が多いようです)。これだけ傾いているところを見ると、車の方のダメージも小さくないように思うのですが、、、。しばらくすると頭の部分が良く目立つ黄色に塗られましたが、どうも効果はないようです。何故でしょうか?理由は単純です。背が低すぎて、ドライバーが後ろを振り向いても、車体の陰に入ってしまって見えないのです。黄色く塗っても、そもそも見えていないのですから意味がありません。もう少し背を高くしてあげればと思うのですが、、、。

いつもぶつけられ、傾いている車止め。そもそも見えていないので黄色く塗っても効果なし。

次は、もう少し気がかりな事例です。佐賀県の小さな町で見かけた交通安全運動の一環として設置されていた人形です。最初、私自身、子供が渡ろうとしているのかと思いドキッとしました。その意味では成功と言えるかもしれません。しかし人々は次第にこの人形に慣れていきます。何回かこの場所を通過したドライバーは、もう驚いてはくれません。そんなある日、近所の横断歩道を実際に小学生が渡ろうとしています。そこに差し掛かった人形を見慣れたドライバーは、「なんだ、また新しい人形か!」と減速もせずに、、、。
こんな恐ろしい事態が起こらないという保証はありません。
このように人間に対してトリックを仕掛けるような操作は、短期的に有効な効果をあげても、時間の経過と共にそのトリックがバレてしまうと、今度は一転して逆効果に変質してしまう場合が少なくありません。「オオカミが来た!」という例の嘘つき少年と一緒です。

横断歩道脇の交通安全人形。「オオカミが来た!」にならないことを切に願います。

私の授業を受講した学生諸君には、ぜひこのような環境を読み解く目を養ってもらいたいと思っています。

讃井 純一郎(共生デザイン学科)