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教員コラム

2012.02.23 - 共生デザイン学科  町並みの色彩について

私の専門「環境心理学」は、人に優しい環境を生み出すことを目的に、人間と環境とのかかわりを心理学の考え方や調査手法を用いて明らかにしようというものです。このような研究をしていると、町中を歩いていても、ちょっとした環境のしつらえが気になるものです。前回の教員コラムでは、車止めと交通安全人形を紹介しましたが、今回は、町並みの色彩について考えてみたいと思います。
時々、町並みの中に、ぎょっとするような激しい色使いの建物が紛れ込んでいることがあります。赤、青、黄と3色そろえてみましたが、これらはいずれも、自分の建物を少しでも目立たせ、商売繁盛につなげようという狙いだとは思いますが、いかがなものかというのが多分一般的な意見ではないでしょうか。

京急戸部駅近くのパチンコ店 広島市内のパーキングビル
ご存知のドンキホーテ(福岡市内) スペイン南部の白の町

一方で、色彩が統一された町並みも存在します。ここで紹介した事例はスペイン南部のカサレスという町(村?)ですが、この町の建物はすべて、外壁は白、屋根はテラコッタで統一されています。ここでは自分の家といえども好きな色に塗ることは許されていません。それどころか、白壁の汚れなどを放置していると、ペナルティを課せられることもあるとのこと。観光資源としての町並みを維持するためには、個人の自由は制約されても仕方がないということでしょう。

両極端の事例を紹介しましたが、では、われわれ自身、町並みの色彩をどのようにしていくべきなのでしょうか。とても難しい問題ですが、私自身は次のように考えています。まず、冒頭に紹介した原色の建物のように、一部の個人あるいは企業が、自らの利益のために町の色彩の秩序を乱すような行為は、何らかの方法で制限されるべきであると考えます。しかしさらに進んで色彩の統一をめざすことについては、どうでしょうか。京都や鎌倉をはじめとする全国各地の伝統的町並みについては、条例等によって自由を制限することについての社会的な合意も得られやすいと思いますが、ごく一般的な町並みについては、そう簡単ではないことは確かです。
ただ、なんでも有りの無秩序な町並みよりは、ある種の統一感のある町並みの方が美しいのは確かで、さらに美しい町並みは、地価の上昇にもつながります。このことを理解した「市民」を少しずつでも増やしていくことが、時間はかかりますが、美しい町並みを実現する上で、じつはとても大切なことではないかと考えています。

知覧(鹿児島県)の武家屋敷街 左の写真(左奥)のコーラ自販機
門と塀で囲われた祇園の駐車場(京都市)

讃井 純一郎(共生デザイン学科)