2016.04.21 - 共生デザイン学科 二宮 咲子 調査・研究・教育活動の紹介―自然と共に生きる社会をデザインする―
私は環境学(自然共生社会論)を専門に調査・研究・教育活動をしています。関東学院大学に専任講師として着任してから2年が経ち、少し落ち着いてきた2015年度からは神奈川県立相模三川公園が新たな活動フィールドに加わりました。2015年度の1年間、始まったばかりの産学連携プロジェクトなのですが、二宮ゼミナールとして企画・運営した自然体験イベントを中心に、「自然と共に生きる社会をデザインする」調査・研究・教育活動についてご紹介できればと思います。
4月: | 2015年度の二宮ゼミナールは3年生8名、4年生9名、教員1名の合計18名でスタートしました。県立相模三川公園はキャンパスからは電車と徒歩で約1時間の海老名市内にあります。平成16年、県立都市公園では初めて河川敷を利用して整備が開始されました。相模川、中津川、小鮎川の合流点付近にあるのが「三川公園」という名前の由来です。現在の広さは13.7ha、未開園地がさらに10haほど残っています。三川公園の丘に立つと、そこには都市近郊とは思えないような風景が広がっています……眼前には雄大な川の流れとどこまでもつづく大空、丹沢・大山の美しい山並みを望むことができます。 |
写真記録(左・中):二宮ゼミ3年生 室井 翼
写真記録(右):二宮咲子
6月: | 「公園づくりワークショップ」を企画・運営しました。開発がすすむ都市近郊、広大な自然を残し続けることは容易なことではありません。そこで都市公園の現状と課題、新たな可能性について、管理者と利用者が一緒に考える“場をデザインする”ことから活動を始めたいと思いました。学生たちは、それぞれの特技や持ち味を活かして、参加者募集のポスター制作やイベント企画、当日はグループワークのコーディネーターやワークショップのプレゼンテーターとして大活躍でした。 |
ポスター制作(左・中):二宮ゼミ4年生 小島優海
写真記録(右):二宮ゼミ3年生 新開雄真
8月: | 「水辺の生きもの観察会―環境学習カードゲームを作ろう!―」を企画・運営しました。三川公園内には、鳩川という小さな川が流れていて、魚類の専門家を招いた学習会が毎年開催されています。ここに、二宮ゼミ4年生が卒業研究のテーマにしていた「つながりを学ぶ環境教育カードゲームの制作」を組み合わせることで、子どもたちが自ら学びたくなるような新しい自然体験学習プログラム開発に挑戦しました。夏休みにも関わらず、学生有志7名が教材資料の作成・準備から当日の生きもの採捕と観察補助に至るまで、ボランティアスタッフとして参加しました。子どもたちの安全管理を任される側を経験することで大人としての責任感が芽生えたからでしょうか。一段と大きく、頼もしく見えました。 |
資料制作(左)及び 写真記録(中・右):二宮ゼミ4年生 山口真弥
11月: | 「昔あそび」と「冒険あそび」を企画・運営しました。三川公園では春と秋の年2回「せせらぎ祭り」が開催され、来場者数は数千人規模のビックイベントになっています。そこに、関東学院大学二宮ゼミナールからイベントブースを出展することになりました。初めに考えたのは、「都市公園の価値」についてです。学生たちのディスカッションでの結論は、都市公園の価値は「自然環境に触れ合える場所」であり、「広い屋外で自由に思い切り体を動かせる場所」であり、「親子やおじいちゃん、おばあちゃんと孫が世代を超えて一緒に過ごすことができる場所」。しかし、これまでの三川公園のフィールドワークからは、これらに課題があるように見受けられました。それは、安全管理面で禁止事項が多くなってしまうことに端的に表れており、この課題は三川公園に限るものではなく、公共空間に共通する課題です。そして、今回のせせらぎ祭りで「昔あそび」と「冒険あそび」を企画・運営してみて分かったことは、学生ボランティアが、これらの課題を解決する可能性でした。学生ボランティアの意義とは、社会人経験になるという個人的な意義だけではなかったのです。自然環境と人びととのあいだ、公園管理者と利用者のあいだ、親と子や祖父母と孫のあいだに、すーっと自然に入っていく学生ボランティアの存在は、今まで離れていた人と人、人と自然とのあいだをつなぐ、いわば公共的な役割を果たしている可能性があります。 |
写真記録(左)及び 三つ折りリーフレット制作(右):二宮ゼミ3年生 室井 翼
写真提供(中):県立相模三川公園パークセンター
いよいよ4月からの2016年度、二宮ゼミナールの3年目は3年生10名、4年生8名、卒業生11名、教員1名の30名でスタートします。すでに学生たちからは、「ホタルの舞う公園づくり」や震災後72時間を自力で生き延びる「減災教育キャンプイベント」などをやりたいという声があがってきています。
2016年度の調査・研究・教育活動も楽しく充実した1年になりそうです。
二宮 咲子(共生デザイン学科)