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教員コラム

2014.07.17 - 共生デザイン学科  「学問する力」をはぐくむ“対話型”の授業

共生デザイン学科の二宮咲子です。教員コラムを書くのは、まだ2回目。関東学院大学に着任して2年目の夏を迎えました。私は「自然共生社会のデザイン」をテーマに、環境社会学と保全生態学の専門教育・研究活動をしています。

担当科目は、生態系保全や水環境・緑地環境のデザイン論、社会的課題を事業性と革新性をもって解決するソーシャル・ビジネス論などです。他にもゼミナールを入れると年間で14科目ほどを担当していますが、これらの講義や演習を通じて、学生の皆さんに身につけてほしいと願っている力は、すべてに共通しています。それは、「学問する力」です。

「学問」というと、何やら難しい、役に立たないもの、というイメージが広まっているかもしれませんね。たしかに「学問」よりも「勉強」のほうが身近に感じられます。テストや受験のために、教科書を“勉めて、時には強いてでも学ぶ”ことで知識や技術を身につける力=「勉強する力」は、大学に入学する準備としても、また入学後にも、とても大切な力です。しかし、大学を卒業するときに「勉強する力」しか身についていないのでは、少々、心もとないです。なぜなら実社会では教科書がないなかで、自ら学んでいかなければ解決できない問題に直面することが多いからです。

たとえば、私が担当する講義や演習では、授業の初回にはいつも、「この授業では“覚える”ことは必要ありません」と言います。「その代り、“考える”ことが大切です」と付け加えます。しかし、“覚える”授業に慣れている学生の皆さんにとって、“考える”授業というのは、最初は雲をつかむようなものです。教員の講義をだまって聞いて、そして考えなさい、というだけでは成り立ちませんね。

そこで私は、出席票の代わりに「コミュニケーション・カード」を毎回の授業で配布します。授業中の“お題”に対して、学生ひとり一人が自分自身のアタマとココロとカラダで考え、賛成や反対の意見をもち、それを書きます。その際、“賛成”か“反対”で終わらず、意見が異なる人にも納得してもらえるように、その“理由”を具体的に説明することに重点をおきます。

こうして授業のなかでは、たくさんのコミュニケーション・カードを書き、そして書かれた意見は読み上げて紹介します。他者の意見を聞く授業でもコミュニケーション・カードを用います。そこには、自分とは異なった意見や、なるほどと納得できた意見について書きますが、なぜ自分はそう思ったのかという“理由”を具体的に考えることが大切です。

このような“考える授業”を15回ほど積み重ねていくと、コミュニケーション・カードの中身は、目に見えて変わっていきます。「あなたにとって望ましい社会のあり方とはどのようなものですか」という“お題”に対して、最初は「自然と共生する社会です」とたった一行しか説明できなかった学生も、最終レポートには「私にとって望ましい社会とは、自然と共生することができる社会です。なぜならば……。例えば……。」というように、原稿用紙に3枚、1200字でも足りないくらいに、自分自身の意見をもち、その理由を具体的に説明できるようになっていきます。

担当科目のなかには100名近くの受講生がいる講義もあり、1000枚を超えるコミュニケーション・カードの山に私のデスクが囲まれてしまうこともあります。それでも「学問する力」にこだわった授業、互いの意見を伝え、聞き、多様な価値観を学び、認め合う“対話型”の授業を続けていきたいと思っています。皆さんのひとり一人が大学を卒業後、たった一度きりの人生を、幸せに、そして善きものにしてほしい、そのために、私にできることといえば、学生の皆さんに“自ら学ぶ力”と、そして“学んだことを常に問いなおすことができる力”=「学問する力」を身につけてもらうことではないか――そう信じながら、私は教壇に立っています。

二宮 咲子(共生デザイン学科)