2017.05.09 - コミュニケーション学科 松下 倫子 「吹き寄せの美学」
桜の花に一喜一憂するのは、日本の文化を象徴していると、毎年この季節になると思います。今年は3月の極端な天候不順から心配しましたが、首都圏では例年よりも少し遅めに開花した桜を、意外と長く楽しむことができました。キャンパスで桜花が新入生を迎えることができたのも、久しぶりだったように思います。
花それぞれに楽しみ方がありますが、桜は、咲き初めよりも満開、さらには散り始めが好まれるものです。桜の花びらが舞い散る中を歩くのは、昼の晴天のもとでも、夜の月明かりの下でも、ことのほか風情を感じるものです。窓やドアを開けた拍子に、風に乗って舞い込んでくる桜の花びらや、髪の毛やコートのフードなどに残る1~2枚の薄ピンクの破片は、映画などの印象的なシーンにも使われています。
地面に散った花びらを愛でるのも、日本特有の美的感覚といえるでしょう。
以前、ネパールに旅行した折に、ホテルのアプローチに散り敷かれた黄色のエニシダの花びらはとても美しいものでした。朝食の後でゆっくり写真を撮ろうと思いながら食堂に向かったのですが、帰りにはきれいに掃き清められていて、とても残念でした。
自然が織りなす偶然の色彩や形を楽しむ文化を、これからも持ち続けたいですね。
松下 倫子(コミュニケーション学科)