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教員コラム

2011.09.29 - コミュニケーション学科  情報化を取り巻く文化

写真を見てください。
なんだか、わかりますか?

おもちゃやゲームのコインのように見えますが、これはインド(デリー)の地下鉄で使用されているコイン型乗車券です。2010年3月に調査で行った時に撮影しました。

金額によって、黒、赤、黄色など、コインの色が決まっています。コインのコーティングはプラスティックですが、中には磁気メモリが埋め込まれています。

地下鉄に乗るためには、まず、窓口に並んで、現金でコイン型乗車券を購入します。写真の後方に並んでいる人の列が、乗車券購入窓口の列です。

次に、入口でコインを改札機にタッチします。SuicaやPASMOの利用時と同じです。

電車から降りて改札を抜けるときには、改札機のスリットにコイン型乗車券を投入します。乗車駅の記録から運賃計算が行われ、正しい金額のコインであれば、改札の扉が開く仕組みです。

このコイン型乗車券は、乗車1回ごとに購入しなければなりませんが、繰り返し使用できるカード型乗車券もあります。カード型乗車券はチャージも可能です。

私たちの日常生活の、いろいろな場面で、ICT(情報コミュニケーション技術)が活用されています。首都圏の生活になくてはならない鉄道・バスのIC型乗車券もそのひとつです。インドの地下鉄の設計・施工は日本の企業が全面的に協力したそうですが、日本で使用しているシステムをそのまま現地に導入しても、受け入れてもらうことはできません。初めて電子マネーを使用する人たちにとってコイン型の乗車券は、視覚的にも直感的にも、とてもわかりやすいのだと思いました。

次の写真は、この夏に訪問したイギリス(シェフィールド)の路上パーキングの看板です。

現金(コイン)がなくても、クレジットカード番号を電話で知らせれば駐車料金の支払いができるという内容です。

イギリスを訪問するのは十数年ぶりでした。以前行ったときは、携帯電話はもちろん無く、それどころかショッピングでのクレジットカードの利用も限定的でした。ところが、今回訪問してみると、あらゆる場所でクレジットカードが受け入れられていました。それだけでなく、鉄道ターミナル駅には30台以上のクレジットカード専用の自動券売機が並び、スーパーマーケットではクレジットカード専用のセルフレジが並んでいました。どちらも、暗証コードを利用して決済します。

日本の自動販売機や自動券売機などは、ほとんど例外なく紙幣も利用できます。しかし、他の国ではコインしか使えないことがほとんどです。自動販売機に高額紙幣を入れる習慣の無い人たちにとっては、コインが無ければクレジットカード、というのが、自然な発想なのかもしれません。

科学技術の進歩は世界中どこにでも伝達されますが、私たちの日常生活に普及させるためには、それまでの習慣を活かした応用方法を考えなければならないのだということが、これらの例からわかります。しかし一旦、新しい技術が普及すれば、今度はそれが新しい文化として社会に定着し、さらに進んだ応用技術を受け入れる体制ができてきます。

私が担当している『社会情報論』という授業では、このような身近な情報化の事例から社会の変化をとらえようとしています。みなさんも是非、身のまわりの情報化をもう一度見つめ直してみてください。

松下 倫子(コミュニケーション学科)