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教員コラム

2012.10.11 - 共生デザイン学科  3年生のゼミで進行中 ― オリジナルって何?

オリジナルでありたい。
これは誰でも思うことですね ―「人まねは嫌だ」、「人と同じではつまらない」等々、時には「個性的であること」を求められることだってあります。

では、オリジナルであるためにはどうすればよいのだろう?

これが簡単にはいかないようなのです。

たとえば、デザイン演習の学生を見ていると、みんなこのことで苦しんでいます。だって、人と同じじゃ認められにくい。第一、やっていて面白くない。独りよがりでもだめ。だから、いいアイデアがないかと考えてばかりで、なかなか先に進まないんですね。やっとひとつ見つかっても、今度はもっといいアイデアはないかと考え続けるってわけです。そして、結局締め切りに間に合わなくなることが多い(やれやれ)。

ゼミの学生たちも、やっぱりゼロから新しいものを生み出そうとして苦労しています。そこで、はじめからオリジナルでありたい、なんてことはきれいさっぱり忘れてしまう方がよいと言って聞かせるのですが、頭ではわかっても気持ちが許さないようなのです(どうです。皆さんも心当たりがありませんか)。

アイデアは、はじめは平凡でつまらないように見えるものでも、それを育てればよい。もっと言えば、まねから始めてもよいのです。だいたい、勉強だって、洋服のコーディネートだって、料理だって、みんなまねから始めたでしょう。それが、いつの間にかオリジナリティ症候群。だいたい、はじめから「いいものを」、「いいことを」と思いすぎるのではあるまいか。だから手が動かないし、きっと質問されてもすぐに口を開くことができないのだね。作ったら直し、書いたら手を入れるということを繰り返すうちに自分らしいよいものになっていくはずなのに。

なんとかしなくちゃと思っていたのですが、今年の3年生の春のゼミでは、「あるもの」のかたちを「別のもの」に応用することをテーマにやりました。実はこれは、先駆者があって、イタリアのデザイナーであるアッキーレ・カスティリオーニという人はこれの名人です。トラクターのシートを椅子に応用したり、ソケットと電球をそのまま拡大して映画のフィルムリールを台座としたライトスタンドをつくったりしています。いっぽうイギリスのデザイナーのジャスパー・モリソンは、薬局をイメージしたカフェのために、錠剤の形を座面としたスツールをつくりました。また、フランスの女性映画監督アニエス・ヴァルダが、「目にしたすべてのものはイマジネーションの助けとなる」と言っているのを観たことがあります。

ゼミ紹介パネル ティッシュペーパー型解説文

学生たちは、街に出かけてそうしたものを探したり、自分たちでスケッチをしたり作成したりしながら、デザインするということの意味や、デザインするための方法について考えました。まだ、端緒に着いたばかりですが、この成果については、いずれ展覧会で公開する予定です。きっと面白いものになるでしょう(たぶん)。写真は、これに先立つオープンキャンパスのゼミ紹介用に、彼らがつくったパネルとティッシュペーパー型の解説文。

何にせよ、まずはオリジナリティ信仰は捨てた方がよさそうです。アイデアが浮かばないときには、よく観察して、気に入ったもののまねから始めて、これを育てながら、自分だけのものにしていく。それでよいのだと思えれば、気持ちも楽になるはず。気分をほどけば、良いアイデアも生まれようというものです。これは、デザインに限ったことではありませんよ。ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズも自伝の中でこんなようなことを言っています。「どんな天才ミュージシャンでも、彼が聞いてきた先達のやったことにほんのちょっと付け加えただけだ」。

さあ、まねから始めることを恐れずに少しずつ、好きなもの、自分らしいオリジナリティに近づきましょう。

ところで、先日はゼミ研修旅行ということで、3年に一度開催される越後妻有大地の芸術祭に出かけてきました。こちらのホームページでどうぞ。
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~fujimoto/nicespaces.html

藤本 憲太郎(共生デザイン学科)