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教員コラム

2017.01.25 - 共生デザイン学科  横浜輸出スカーフにみるイタリアシルク博物館にて展示(2016年12月3日〜2017年1月9日)

横浜・シルク博物館の御厚意と御協力のもとに2011年より始めた戦後横浜輸出スカーフ(横浜市工業技術支援センター所蔵)の展示も今回で6回目を迎えました。2016年は日伊国交樹立150年にあたることから、テーマは「イタリア」。イタリアに仕向けられたもの、イタリアの歴史や文化、都市の名所などに取材したものを約12万点のスカーフのなかから18点選び展示しました。その一部を紹介しましょう。

柄名《ピサの斜塔》1957(昭和32)年
中世イタリアの海運都市ピサ。そのドゥオーモ広場に建つドゥオーモと洗礼堂を中景に、そして彼方に連なるアプアーネ山脈を後景に傾く鐘楼が前景にひと際大きく描かれています。観光みやげとして製造販売されたものですが、まだカメラが普及していない時代にあっては旅の記憶を留める一品となり、またピサを訪れたことのない人びとにとっては刺激的で、大いに興味をそそられるものとなったでしょう。

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柄名《ベニスのゴンドラ》1959(昭和34)年
スカーフ中央、菱形に切り取られた枠内に見られるのは大運河(カナル・グランデ)に架かるリアルト橋。ベニスのシンボルともされる橋です。ゴンドラは何世紀にもわたりベニスの交通手段としての役割を果たしてきました。船頭(ゴンドリエーレ)が舳先に向かって立ち、一本の櫂(オール)で押してすすみます。晴れた日、水面が鮮やかに青く輝くなかを3隻のゴンドラが行き交う情景が描かれています。
ところが周囲に配されたトランプのマーク、スペード、ダイヤ、ハート、クローバーの枠内に目を移してみると、農作業する人物やヤシの木がみられます。あきらかにイタリア、ベニスとは異なる風景である。じつはこのスカーフは「中東のベニス」とも呼ばれていたバスラに仕向けられたものなのです。

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横浜輸出スカーフのさまざまな意匠には民族や文化、宗教のちがいなどが読み取れることはもちろん、そのときどきに人びとが感じていた喜びや抱いていた夢といったようなことまでも伝わってくるのです。

山﨑 稔惠(共生デザイン学科)