MENU

教員コラム

2024.06.11 - コミュニケーション学科  長崎研修で孔子廟の見学から学んだ中国文化

コミュニケーション学科教育の特色であるPBLとしてのプロジェクト科目は、今年度も多文化の理解というテーマと設定し、履修する学生が約60名で大人数でした。4月と5月2回分けて長崎にて実施し、長崎市役所職員による講義のほか、出島やグラバー園、新地中華街、孔子廟を見学し、それぞれの歴史と文化について学びました。

今回は孔子廟の見学で見た中国文化の一部を紹介したいと思います。孔子廟は、1893年に中国清朝政府と在日華僑が協力して建てられたもので、春秋時代末期の思想家・儒教の創始者である孔子を祀った日本で唯一の本格的な中国様式の霊廟です。廟宇の随所に中国の歴史と文化、伝統芸術の粋がちりばめられています。まずは建物の色が印象的で、外壁は朱色、屋根は黄色となっています。朱色は中国の伝統色であり、魔除けと慶びを象徴する色としてよく使われています。中国の歴史では、黄色は皇帝の色を表していて尊ばれており、皇帝の衣の色は黄色に設定されていました。漢代以降、儒教が国教となり、孔子が歴代皇帝に崇敬され、皇帝と同等に扱われていたのです。

それから、正門となる儀門から大成殿(正殿)へと延びる左右に通路があり、通路の壁面には大理石に彫られた『論語』がびっしり貼られています。全20編、約500章、1万6018文字全てが彫られています。「故きを温めて新しきを知る」「十五にして学に志す、三十にして立つ」「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」「過ぎたるは猶及ばざるが如し」「これを知る者は、これを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者にしかず」などの名言がよく知られており、現代社会にも多大な影響を与えています。

また、儀門を通って中に入ると、右側にある展示物「宥坐之器(ゆうざのき)」が目を引かれます。体験をしてみますと、最初は傾いている器ですが、水を入れていくと、だんだんと水平になっていきます。そして、さらに水を入れていくと、器が傾き、水がこぼれてしまいます。「虚なればすなわち傾き、中なればすなわち正しく、満つればすなわち覆る」というのを表した器です。孔子の説いた「中庸(過不足がなく調和がとれていること)」 ということをこの器から体験で学ぶことができます。

そのほか、大成殿の奥には中国歴代博物館が併設されており、北京故宮博物院をはじめ中国各地の博物館が所蔵する国宝級の貴重な文物を常時展示しています。また、孔子廟では、年間を通じて、中国の伝統芸能である「変面」ショーや様々な式典、祭典が行われていますので、孔子や中国の歴史、文化を学ぶには絶好のスポットとなっています。機会があれば、ぜひ一度訪れてみてください。

大成殿(正殿)

 

儀門(正門)

宥坐之器(ゆうざのき)