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教員コラム

2008.10.16 - コミュニケーション学科  井の底のカエル

この7月中旬、海外学術調査研究のため、
井上枝一郎学部長と一緒に再び中国上海応用技術学院を訪れました。
学術的な活動を終え、今後国際交流活動を如何に展開するかについても、
陳東輝副学長や朱建育国際交流事務室長などの方々と意見交換を行いました。

↑写真は、本学の状況を説明する井上学部長とこれに聞き入る陳副学長

↑上海応用技術学院での学術交流(左より二人目が筆者)

筆者(中国出身)が日本に留学に来てから、早いものですでに12年が経ちました。
今では、完全に日本人になってしまったと自嘲(?)しているありさまです、
最近、帰国する度に、あたかも他国に行ったような感じさえします。
街並みの風景だけではなく、人々の価値観や人生観、言動なども
私が育った頃とは大きく変化していることが印象的です。

当時は、ほとんどの大学では、「徳・智・体」を目標に
優秀な学生(三好学生と呼ばれる)を育てることを大学の方針としていました。
しかし、今回、陳副学長から、
「三好だけでなく、国際的視野をも具える学生を育成することが本学の方針だ」
と聞いて、驚きの思いと今昔の感を隠せませんでした。

さて、仕事を終えて、中国の明時代の文化が溢れる「豫園」へ昼食に行って来ました。
「豫園」は独特の江南庭園建築芸術の特色をもつ古代庭園ですが、
上海の有名な料理が集まっているところとしても知られています。
多くの国の首脳たちや外国人の観光客もよく光臨している「緑波廊」というお店に入って、
小籠包やちまきなどはもちろんですが、カエル料理も久しぶりに味わいました。

↑上海豫園の九曲橋外貌 ↑上海豫園の名店−緑波廊

店員さんに、「世界中の様々な人々に会えるのは羨ましいことですね」と言うと、
「いや、私はまだ井の底のカエルですよ。でも外の世界をもっと知りたいですね」と、
我々が食べているカエルを見ながら、その店員さんが返事してくれました。

「井の底のカエル」って、
中国の荘子の「狭い世界に閉じこもって、広い世界のあることを知らない。
狭い知識にとらわれて大局的な判断できない」
という言葉を表現するときに使うことわざです。
このことわざは福沢諭吉の著作「学問のすすめ」の中で使われて、
日本では「井の中のカエル」という表現で一般化したと聞いています。

その店員さんは自分を「井の底のカエル」と比喩していましたが、
井の底から脱出しようという姿勢も見せていました。
まさに、脱出する意識がポイントです!
今度、とりあえず授業やゼミでこの言葉を使おうと思っています。
「井の底のカエル」と「国際的視野」について・・・

施 桂栄(コミュニケーション学科)