2019.08.26 - 共生デザイン学科 讃井 純一郎 木工を始めました
昨年春から、木工を始めました。木工といっても、私が取り組んでいるのはバターナイフやペーパーナイフ、スプーンなどの生活小物の制作です。
これまでデザインに対する人々のニーズを明らかにすることをテーマに研究や業務を行ってきました。またその対象も、建築や自動車といったチームで取り組むものが多く、自分自身でモノを作り上げる機会はほとんどありませんでした。自分で考え、自身の手を使って、思いのままにモノづくりをしてみたくなったというのが、この歳になって木工を始めた理由です。
上の写真は、まだ木工を始めて間もない頃の、バターナイフの制作過程を記録したものです。
まずは構想。どんな形にすればバターを切りとりやすいか、握りやすいか等を考え、おおよその形を決めます。粘土でモデルを作って検討することもあります。次は素材選び。材料の木は、蓼科の山荘の庭に落ちている小枝です。これまでに集め乾燥させた小枝の中から、イメージした形にふさわしい太さ、カーブを持つ小枝を選び出します。次に粗削りです。この段階では、電動のこぎりを利用することもあります(写真左端)。おおよその形が切り出せたら、次は切り出しナイフで形を整えていきます(写真中2枚)。そして最後は紙やすりで形を仕上げ、オイル塗装を施して完成です(写真右端)。当初はバターナイフ1本を仕上げるのに丸2日もかかっていましたが、最近は、半日(4時間)ほどで済むようになりました。
木工の醍醐味は、もちろん何の変哲もない木切れから機能的で美しい形(自己満足?)が生み出されてくることにあります。「こんな木切れから、これほど素敵なものができるんだ」などと言われると、喜びはひとしおです。そこで最近は、作品を見ていただく際、次の写真の様に、単独ではなく元の木切れも併せて見ていただくようにしています。
もう一つの魅力は、切り出しナイフや紙やすりを使っての作業中、本当に無心でいられることです。制作に取り組んでいる半日は、それこそあっという間に過ぎてしまいます。職人の喜びというのは、案外こんなところにもあるのではないかと感じる次第です。
共生デザイン学科のデザイン教育は、手を動かすこともさることながら、それ以上に「誰のために」「どんな目的で」といった形で、頭を使うことを重視しています。ただ、まだ1年少々と経験は浅いものの、自らの手でモノを創り出す喜びを知ってしまった今、「あまり頭でっかちになってしまってもいけないかな」と感じ始めた次第です。