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教員コラム

2008.09.25 - 共生デザイン学科  はじめての施主体験

私の専門は「デザインのための心理調査」で、
住宅や自動車などに対する人々のニーズを、
インタビュー調査やアンケート調査によって明らかにする仕事を
ながく行ってきました。

そんな私が、6年前、生まれて初めて施主を経験しました。
蓼科高原に友人一家と共同所有の山荘を建てたのです。

もともと建築学科卒とはいえ、実設計の経験はありませんから、
私ができるのは利用者(この場合、私を含め2家族8名)のニーズを正確に把握し、
それに対応した基本計画を立案するところまで。
それを仕上げるのは地元の建築家(期せずして関東学院のOB!)という体制です。

基本コンセプトは、以下の通り。

■ 見晴らし重視+広いデッキ
■ 浴室重視
■ 2家族8名が同時に生活可能
■ 各家族の占有空間確保(マスターベッドルーム)
で、出来上がりが下の写真です。

建物自体は、住んでみて初めて気付く問題点もありましたが、
まあ、それなりの合格点。
それ以上の収穫が、自分自身の体験を通じて、
施主というのがいかに不安と不満にみちた立場であるかがわかったこと。

■ そもそも自分たちがどんな家が欲しいのかがわからない。
友人一家のニーズは、「広いデッキ」のみ。
それ以外はすべて「おまえに任せるよ!」
■ こんな間取り、こんな形とアイデアはあっても、
構造上問題は?コストは?といった不安に対する答えは入手困難。
で結局は、無難な設計案に。
■ 専門家が当然考えてくれるだろうと思ったことが、できていない。
工事は進んでしまい、やり直しもできない。
■ 手抜き工事に対する不安?

そして、このような不満や不安を克服する上でもっとも大切なのが、
施主と作り手との間にしっかりした信頼関係を形成していくことにあることもわかりました。

これまで「調査を通じてニーズを把握できれば、おのずと良いデザインが可能となる」
といった暢気な感覚でいましたが、
現場では、話はそれほど単純ではなかったのです。
なにごとも理屈だけではなく、実際に体験してみることが大切だと痛感した次第です。

追伸:今年は初めてミニトマト栽培にチャレンジ中。もうすぐ収穫の予定です。

讃井 純一郎(共生デザイン学科)