2017.03.09 - コミュニケーション学科 佐野 予理子 ペーパータワー作成を通じて「社会的手抜き」を考える
グループで共同作業を行うとき、「自分ひとりくらい手を抜いてもいいか」と思ってしまうことがあります。社会心理学ではこの心理を「社会的手抜き」と呼び、様々な研究が行われてきました。結論として、グループの人数が増えれば増えるほど、ひとり当たりの作業量や努力が低下することがわかっています。なぜ「社会的手抜き」が生まれてしまうのでしょうか?どうすれば「社会的手抜き」を阻止できるのでしょうか?
グループでの共同作業の際、ひとりひとりの成果が問われないときに「社会的手抜き」が生じると考えられます。従って、グループのメンバーひとりひとりの貢献が明らかになったり識別できたりする状況では、「自分ひとりくらい手を抜いてもいいか」と思いにくくなります。
「ヒューマンファクター」という授業で、受講生に「識別性」という点から「社会的手抜き」を考えてもらいました。受講生を4人で1グループにし、ペーパータワーを作るワークを行いました。ペーパータワー作成の主なルールは、①グループで1つできるだけ高いペーパータワーを作る、②紙は折り曲げたり切ったりしてOK、③配布される紙以外の道具は使ってはいけない、④ペーパータワーは自立していなければならない、の4つです。白い紙を配布し、このルールに従ってペーパータワーを作成しました(5分間)。結果として、積極的な人や器用な人が主に作業し、その他の人は見ているだけ、というグループが多くありました。
次に、4色の異なる色の紙を配布し、再度ペーパータワーを作ってもらいました(5分間)。その際、自分が担当する色を決め、担当色の紙しか触ってはいけない、というルールを付け加えました。1回目のペーパータワー作成のときはすべて白い紙だったので自分の貢献が目に見えてわかりにくかったのに対し、2回目のペーパータワー作成では担当色が決まっているため、成果への貢献が明らかとなります。2回目は「見ているだけ」の人がほとんどいなくなりました。担当色を決めたことにより、グループメンバー全員で取り組まざるを得なくなり、結果として「社会的手抜き」が生じにくくなりました。
受講生はこのワークを通じ「識別性」の効果を実感できたように思います。これからもグループで共同作業したり働いたりする機会が数多くあるはずですが、この授業で行ったワークが共同作業をうまく進めていくためのヒントになればと思います。
佐野 予理子(コミュニケーション学科)