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教員コラム

2023.05.29 - 共生デザイン学科  佐野ゼミナールと自動車会社との産学共同研究

佐野ゼミナールでは、本学理工学部の武田克彦研究室と協力して、いすゞ自動車株式会社と産学共同研究を2015年から継続しています。研究テーマは「トラックのLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」です。本研究のLCAでは、トラックの製造から走行、廃棄までに排出される二酸化炭素量を試算しています。

私たちは、2023年5月26日(金)に、横浜パシフィコで行われた自動車技術会春季大会で、LCA結果から「電気トラックは環境にやさしいか?」を学会で発表し、討論しました。

発表の結論を先に申しますと、現状の日本国内での大型トラック輸送は、ハイブリッド車が最も環境への悪影響が少なく、次いで、ディーゼル車でした。電気トラックはディーゼル車より環境に悪い試算結果となりました。この結果は、日本での発電では、化石燃料発電の依存度が高く、二酸化炭素排出量が大きいことに起因しています。

重要なポイントは、トラック輸送では、貨物量と航続距離、充電時間、タイミングを考えて、運用する必要があります。

下図は、大型トラックの最大積載重量を示します。青色の部分がリチウムイオン電池です。ハイブリッドとディーゼルの積載量は約15トンです。しかし、電気トラックでは、航続距離を延ばすため、5倍のリチウムイオン電池を載せて重くなるため、積載量は約半分の7.8トンになると本研究で試算されました。

大型トラックの貨物積載量

例えば、鹿児島から東京までの距離は、自動車道路で約1,280kmです。この区間の電気トラック輸送では、貨物を半分の約7.5トンにして、途中で充電も必要で、運搬効率が非常に悪いことがわかります。

現在は、大型電気トラックの環境メリットは少ないですが、将来,各国で自然エネルギーを増やすなど、電源構成の改善とリチウムイオン電池の性能向上により,電気トラック使用での環境負荷の低減化が期待されます。

今後は、水素やバイオ燃料を用いたトラック走行やリサイクル・リチウムイオン電池の産学共同研究も行う計画です。

 本内容は自動車技術会春季大会での発表内容に基づきます。

以上

 

出典
(1) 自動車技術会,ウェブサイト, 2023年春季大会, https://www.jsae.or.jp/2023haru/
(2) 佐野慶一郎, 武田克彦(関東学院大学), 久地樂昌紀(いすゞ自動車)ほか, “大型トラックのハイブリッド化とBEV化のLCA比較”, 講演No.233,春季大会講演要旨5頁, 2023年自動車技術会春季大会.