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教員コラム

2019.09.18 - コミュニケーション学科  バース大学の学会参加:死と共生について考える

2019年9月3日から8日まで、イギリスのバース大学で開催された国際会議に参加してきました。温泉が湧き出ることから、風呂を意味する”Bath”と呼ばれるようになったこの街は、世界遺産にも登録されています。

会議のテーマは”Death, Dying and Disposal”であり、「死」について多分野の研究者や実務家が約270名参加しました。

私は、” Victim’s Social Media on Television : Examining the privacy of the deceased” (テレビで放映される犠牲者のソーシャルメディア:故人のプライバシーを考える)というテーマの研究発表をしました。ソーシャルメディアの報道利用を巡って日本・米国・フランスの比較調査を行った結果、日本では報道に対して故人のプライバシーへの懸念などネガティブな印象が多く見られたのに対し、米国とフランスでは「より事件について知ることができる」といったポジティブな印象が多く見られました。

学会のセッションは多岐にわたるものでした。ドラッグ使用者と死について、緩和ケアの現場について、デジタル時代の死について、各国での追悼の状況についてなど、死をめぐる様々な研究や事例報告を聴講してきました。なかでも印象に残ったのは、ルーマニアの話です。不慮の事故で亡くなられた方の記念碑が、街のあちこちに作られているとのこと。写真と故人について書かれたプレートと十字架が設置され、道行く人は足を止めてその文章を読み、特に若者や子供であれば立ち止まって祈りを捧げるとか。冬にはクリスマスの装飾もなされ、街の中にふと故人を偲ぶものが共存している光景がありました。

共生ということを考えるとき、死者とともに生きること、そして死をどうとらえるかということも、同時に考えて行く必要があると痛感した学会参加でした。

「ローマン・バス」バース市にある古代ローマの公衆浴場跡