2022.05.24 - コミュニケーション学科 川村 覚文 「はやりのメタ?」
最近、「メタバース(Metaverse)」という言葉をよく聞くようになりました。また、SNSとそのプラットフォームを提供する企業であるFacebookが、「メタ」(正式にはMeta Platforms)という名前に変わったということも、話題として記憶に新しいところでしょう。
このような、何かと話題の「メタ」という言葉ですが、その意味は「超える」といったものであり、実は哲学や思想の領域では大変馴染みのある言葉です。そもそも、古代ギリシアの哲学者アリストテレスの大著『形而上学』の原題が、ta・meta・ta・physika(英語ではMetaphysics)であり、ここから哲学は「自然」や「物理的なもの」(physika=physics)を「超え」(meta)た原理を探究する学問、というように捉えられるようになっていったのでした。
「メタバース」をめぐる議論は、その定義からして錯綜しているし、そもそも本当に(哲学などで使われている語義通りの)「メタ」なものなのかどうかを確定するのはあまり意味がなさそうなのですが、哲学や思想に馴染みがあると、「メタ」という言葉をなんだか全然知らないものとして当惑する、ということはないかもしれません。