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教員コラム

2014.09.11 - 共生デザイン学科  築地松:島根の気候風土に根ざした環境デザイン

山陰地方には伝統的な暮らしがまだ色濃く残っている.ここでは山陰の気候風土に根ざした環境デザインの事例として,島根県出雲市斐川町の築地松(ツイヂマツ)を紹介したい.

出雲平野に斐伊川が流れ込み、宍道湖へと流れる流域では,屋敷の周囲にクロマツを植え,それを垂直に刈り揃えて衝立のようにした屋敷林が,田園の中に散居して立ち並ぶ独特の景観が見られる(写真1,2).B. Rudofskyが世界のヴァナキュラー(風土的・土着的)な建築や集落を紹介した著書(B. Rudofsky, 1964)にも取り上げられたことでも,その景観の特殊性が伺える.斐伊川はかつては暴れ川であり,築地松のルーツはその流域の新田開発と屋敷づくりの際,川の氾濫に備えて土を盛り敷地とし,それを保護するためにクロマツを植えたことに始まり,築地松という呼び名もここから来ている.築地松は通常,冬の季節風から屋敷を守るように,敷地の北と西の二面に設けられる(写真3).高さは民家の棟よりも高く,3年から5年に一度の割合で陰手刈り(ノーテゴリ)と呼ばれる剪定がなされる.築地松は防風効果だけでなく,夏に西日を遮蔽する役割をも果たす.ある研究によれば,築地松の西日の日射遮蔽率は平均的なもので8割を超え,住民は高い割合で,「陽射しを和らげる」「暑さを和らげる」と評価しているようである.

築地松は地を固め,洪水,氾濫から敷地を守り,季節風から屋敷を防ぎ,日射を遮蔽して暑さを和らげ,かつて松葉や枝は煮炊きや燃料にも利用されたという.実に様々な役割を果たしてきたのである.そして最終的に地域固有の希有な景観を創出してきた.地理学者の矢沢大二は気候の影響が目に見える形で表出した景観を気候景観と呼んだが,築地松は山陰の気候景観,風土に根ざした環境デザインの横綱といえるだろう.

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写真1 出雲平野に広がる築地松が散居する希有な景観
(Bernard Rudofsky: Architecture Without Architectsより)
写真2 築地松:垂直に刈り揃えられた屋敷防風林
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写真3 築地松:敷地の北西に配され冬の季節風から屋敷を守る

Bernard Rudofsky(1964): Architecture Without Architects, Universuty of New Mexico Press, 131-132

兼子 朋也(共生デザイン学科)