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教員コラム

2019.12.25 - 共生デザイン学科  多様化する若者の趣味世界

私の長年の研究テーマの一つが「趣味をめぐるデザイン文化論」です。日本語で趣味という語は、「良い趣味(テイスト)」、すなわち優れた感性を指す場合と、個人が熱中する「娯楽、道楽(ホビー)」を指す場合があります。近代社会の中で、多くの人々がより良い趣味を手軽に得ようと、消費活動を行ってきました。しかし大衆消費社会の中では、趣味は多様なホビーという意味の方が強くなっていきます。皆が必ずしも絶対的な良い趣味を目指すようなことはなく、それぞれのホビーに親しむことで満足しています。特にこの数年、手作りという趣味が現在に至るまで人々に愛好され、男女それぞれに分化していく様子を共同研究してきました。その成果は今年、『趣味とジェンダー』(青弓社)として出版されました。

個人の好きな世界で、共有できる人たちの間で何かを熱中するという島宇宙化した世界は、今日いたるところで見られます。そこで得られた達成感や、得られた仲間は、その人の仕事や学校といったパブリックな場所よりもずっと重要なものになっています。私のゼミ生の卒業研究でも毎年、趣味の世界をテーマにした論文がたくさん生まれています。皆自分が熱中している趣味を足掛かりに、それを学術的な問題関心へとつなげていきます。漫画やアニメ、古着ファッション、キャラクター収集、アイドルオタクなどに始まり、飛行機マニアや特撮ヒーローに至るまで、彼らの趣味の範囲は幅広いです。自身の趣味を研究にまとめあげていくことで、自らの趣味の世界を客観化して捉えなおすことができているようです。