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教員コラム

2018.08.09 - コミュニケーション学科  物事には理由がある

数学で

と書くのは中学の初年次に学習すると思います。しかしこの書き方は、何かおかしくないでしょうか。x×3をx3と書くならわかりますが、どうしてあえて順番を変えて3xと書かないといけないのでしょうか。中学では、理由は教わらないと思いますが、実はちゃんとした理由があります。

まず、3xという書き方を最初に考えだしたのは、デカルトという人物です。「われ思う。ゆえにわれあり。」という言葉で有名です。高校までの学習では、哲学者として社会科で名前が出る人物です。デカルトはフランス人です。従って、彼が考え出した数学の表式には、フランス語が反映しています。ですが、フランス語はなじみがない人が多いと思うので、以下では簡単のために英語で説明します。

英語では、かけ算記号の×は”times”と言います。しかし、”times”には、本来は「かける」という意味はなく、「~回」という意味しかありません。3xは”three times x”と言いますが、これは「3回xを足し算した」というのが本来の意味です。”This is three times as large as that”という文は、「これはあれの3倍の大きさである」という意味ですが、これも本来は、”as…as”は、「~と同じ」という意味ですので、「これはあれと同じ大きさを3回繰り返したものである」というのが本来の意味で、日本語に訳すと「3倍の大きさ」という意味になるのです。この”This is three times as large as that”を数式で表現すると、
This = 3×that
となります。”three times as large as that”という英文通りに書くと、乗数である3はthatの前に来ることになります。

このように、日本語では、x+x+xを「xを3回足した」と言うので、x×3になりますが、英語では「3回xを足した」と言うので、x+x+xは3×xと書きます。英語では、日本語と掛け算の言い方の順序が逆になるので、数式で書く時の順序も逆になるのです。たとえば、5×3は、日本語では5+5+5を意味しますが、英語では3+3+3+3+3を意味することになります。

英語ではx+x+xはもともと3×xであるわけですから。これを3xと書くのは当然です。上に書きましたように、本来の数式記法はフランス語に基づいており、英語の”times”に相当するものは、フランス語の”fois”ですが、かけ算の言い方が日本語と逆であるという点では英語と同じです。その言い方をそのまま表したものが今の数式での記法になっています。

このように、物事にはちゃんとした理由があります。中学ではそういったことは教わらないでしょうが、英語の知識が十分でない段階でそれを教えるのは無理がありますし、単純にそういうものだと暗記させた方が効率的ではあります。しかしながら、大学生になったら、多くのことに疑問を抱き、安易に納得せずに、自分で考える姿勢が大切になってきます。

x+xがなぜ2xと書かれるのかという説明に際して、数学、英語、社会科が相互に関連して出てきました。高校までの学習においては、学習内容が便宜上複数の科目に分割され、その相互関係が見えることはあまりありませんが、大学では、複数の講義で学習する内容が相互に関係してくることが一般的です。

多くの内容を幅広く学習し、それらを相互に関連付けて、自分でいろいろ考えたり調べたりするのはとても楽しいものです。幸い現在では、多くのことがネットで調べられますので、上記の数式に関する疑問なども検索して簡単に答えを見つけ出せますが、それらの情報は不完全であることが少なくありません。図書館等を活用して、ネット上では不完全である部分をさらに深く調べることも重要です。