2024.12.17 - 共生デザイン学科 日高 仁 「縮小の世代」の君たちへ
今、大学生や高校生の君たちは、人口減少が始まった2005年以降に生まれ、そして、恐らく、 君たちのうちの多くの人は22世紀を迎えることができるのです。そんな皆さんのことを、 私は「縮小の世代」と呼んでいます。
理由は上の画像の通りです。 グラフは日本の総人口を表しています。赤い線は、皆さんがおそらく生きるであろう年代をプロットしています。見ての通り、これまでの日本の歴史で、皆さんの体験するような急激で長期的に続く人口減少を体験した人はいません。これだけで、皆さんがいかに特別な世代かがわかると思います。
このままいけば君たちが90歳から95歳くらいになる2100年に日本の人口は、君たちが生まれたピーク時の1/3になります。
その時日本は、どんな社会になっているでしょうか? 想像できますか?
私は大学で「コミュニティデザイン論」という授業をしています。その中で、皆さんがこれから生きていく「縮小社会」について一緒に考えています。 一緒に考えているという表現をしましたが、答えがないので、私も教えるというより、皆さんと一緒に考える、その上でのサポートをしているという立場だからです。
この授業では皆さんに「縮小社会を楽しく生きるためのライフデザイン」というテーマで、逆境に見える社会的バックグラウンドを、むしろ逆手にとって楽しめるようなアイデアを出してもらうようにしています。
例えば、二地域居住や、多拠点生活という言葉を聞いたことはありますか?昔でいう別荘の生活に近いかもしれませんが、もう少し、地域のコミュニティとのお付き合いを大切にして、環境だけでなく仲間をいろいろな場所でつくることに楽しみを見出している人が増えています。私自身も神奈川と山梨の二地域居住をしています。空き家が増える「縮小社会」では、家を手に入れやすくなるため、こうした生活は、恐らくスタンダードになる気がします。そういえば昔は長期ローンを組んで、家が一生の買い物なんて時代もあったらしいね、という感じになるかもしれません。
地方の古民家などをリノベーションする空き家再生。別の授業やゼミナールで、私はDIYの実習をしています。自分たちの力でちょっとした改修工事くらいできる力も、これからは、基本的なサバイバル技術のひとつとして 重要になると考えて教えています。
さらに、住む場所だけではなく、職業についてもいろいろな変化がある気がします。例えば、幾つもの仕事を持つ「複業」という生き方も、恐らくスタンダードになるとみています。 私自身は、大学で教えながら建築の設計も行い、自宅ではカフェも開いています。最近は二地域居住している山梨でお茶作りもしています。好きなことを続けて行った結果、自然に「複業」になっていました。授業では、皆さんにどのような「複業」を自分がやってみたいか考えていただき、自分の人生の設計図のようなものを描いていただいています。
「縮小社会」という言葉を聞いたり、自分たちが「縮小の世代」なんだと聞くと、多くの人は、はじめ、損したような気分になるそうです。
しかし、共生のデザインを学ぶ学生は、逆転の発想が得意です。普通よくないと考えられるようなコンディションでも、そこにデザインの視点が加わることで、なんとか解決していく力。「縮小社会」を「縮小の世代」である皆さんたちが力を合わせて考え、議論することで、かえって、これまでより良い社会にしていくことが、きっとできます。