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教員コラム

2016.07.25 - 共生デザイン学科  空間デザインとコミュニティデザイン①:香港でインテリアをデザインする

今年2016年の4月から着任した日髙 仁(ひだか・じん)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
建築家としてインテリアからまちづくりまで様々なスケールの空間デザインを実践しています。また、当学科ではコミュニティ・デザインを担当いたします。
コミュニティのような「人」の存在は、空間デザインにおいてはとても大事な要素です。例えば、公共建築のような建物のデザインをする際には、地域コミュニティは、建物のクライアントでありユーザーでもあります。最近では、ワークショップなどを通じて地域コミュニティと建築家との意見交換を頻繁に行って建物のデザインを完成させるケースも増えました。また、人は空間の大きな構成要素であり、人が入ることで建築空間は完成されるといえます。こうした意味で、空間デザインとコミュニティ・デザインは表裏一体で切り離せないものといえます。
香港の中心市街地は世界で最も高密な居住を実現している都市です。日本の都市には住宅、商業、工業などの用途が平面的なゾーニングで規定されますが、高層ビルがひしめき合うようにして林立する香港では、低層階は商業に、高層階は住居に利用され立体的なゾーニングとなっています。このため、セントラルという金融やビジネスの中心地区においてもまちなかに居住している人は多く、早朝から深夜まで人が行き交う路上風景は、丸の内のオフィス街などとは大きく異なっています。このセントラル地区に、二つの高級紳士服のセレクトショップをデザインしています。クライアントは二人の30代の若手起業家。1年ほど前に相談を受け、先月、1軒目となるショップをオープンしました。香港は、日本とは比較にならないほどの格差社会です。クライアントは二人とも運転手付きの高級車で移動し、会社には個人秘書、家にはハウスキーパーを雇っています。彼らの生活を支えている運転手やハウスキーパーなどの労働者の多くは、主にフィリピンなどから出稼ぎにやってきている外国人です。週末の都心部は、外国人出稼ぎ労働者がそこらじゅうにピクニックシートを広げ、数万人と思われる人々が一日中、道端で過ごしている風景は圧巻としか言いようがありません。
建築現場にも様々な人々が出入りしていますが女性の姿が多いのには驚かされます。商業施設の施行作業は深夜に行うことが多いのですが、こうした夜間の作業にも、多くの女性スタッフが、男性同様に働き活躍しています。片付けや清掃が得意で細かいところにも気を配ってくれる女性の存在は、建築現場を明るく、快適なものにしています。
現在、継続して次のショップをデザインしています。こちらは単なるブティックではなく、理容室とカクテルバー、シガールームを併設する、紳士のためのクラブのような場所になる予定です。
設計を行う際には、現地のコミュニティについての理解をできるだけ深めるように心がけています。しかし、海外プロジェクトにおいては、社会の仕組みが大きく異なるため、これがなかなか大変です。

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セントラル地区にオープンした「Attire House」という名前の店舗

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香港中心市街地の夜景、高層階は住居なのでオフィスが閉まってからも街から明かりが消えることは無い

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週末のセントラル地区は外国人労働者が一日中ピクニックをしている

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「Attire House」の現場設営のために深夜に働く女性スタッフの様子

日髙 仁(共生デザイン学科)