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教員コラム

2022.12.20 - 共生デザイン学科  3D映像ブームの再来なるか?!

3D映画は流行を繰り返しており、映像ジャーナリスト/クリエーターの大口孝之氏よる2009年の講演では、1952年〜1954年が第1次、1982年〜1984年が第2次、2005年〜が第3次とのことである。
2009年は、ジェームス・キャメロン監督の映画「アバター」が3Dフルハイビジョンで制作され、3D映像が注目された年であり、本学では私がカリキュラムなどを検討して理工学部に映像クリエータを目指す学生を育成する「映像クリエーションコース」を開設した年であった。
3D撮影用Rigや3Dモニタ等を導入し(写真1)、3D映像制作の指導も行っていた。2011年頃に、各社から2つのレンズを搭載した2眼一体型3Dカメラ(写真2)が発売されたこともあり、3Dカメラを持って撮影に行ったり、学生の3D映像作品を展示会等で上映したりもした(写真3)。

写真1 3D撮影Rigと3Dモニター

 

写真2 2眼一体型3Dカメラ

 

写真3 展示会での学生3D映像作品の展示

 

3D映画などが収録された3D Blu-rayソフトがぞくぞくと発売され、TVやプロジェクターも3D対応していた。

ところが、地上デジタル放送では3D放送されることがなく、また、2012年のロンドンオリンピックの中継が、日本では3Dで行われなかったことが大きいかもしれないが、次第にTVから3D機能が省かれていった。その頃、フルハイビジョンに対して縦横倍の画素数の4K映像への対応に製品の機能がシフトしていった。結局、2017年から3D対応のTVは発売されなくなり、現行の4K TVはいずれも3D対応していない状況となっている。

プロジェクターには3D対応しているものがあるが、4Kの3Dには対応しておらず、フルハイビジョンの3Dまでである。そもそも4Kの3Dは規格が作られていない。

なお、ディスクメディアの内、DVDはフルハイビジョンを収録できず、Blu-rayがフルハイビジョンに対応しており、3Dハイビジョンは3D Blu-rayが対応している。Blu-rayは4Kには対応しておらず、Ultra HD Blu-rayが4K対応したディスクであるが、4Kの3Dには対応していない。そのため、Ultra HD Blu-ray(2D 4K)&3D Blu-ray(3Dフルハイビジョン)&Blu-ray(2Dフルハイビジョン)の3枚組のセットという商品が展開されていた。現在3D Blu-rayは、ほとんど発売されていない状況となっている。

12月16日に公開された「アバター:ウェイ・オブ・ウォータ」は4Kの3D作品であるが、Ultra HD Blu-rayには4Kの3Dで収録できず、TVやプロジェクターも4Kの3D入力に対応していない。つまり、4Kの3Dで鑑賞するには、映画館に行くしかない。

映画館の上映システムも進化しており、「4K」&「3D」&「HFR」&「HDR」&「立体音響」という盛り沢山な仕様で上映している映画館がある。
「HFR」は「ハイ・フレーム・レート」のことで、通常の映画は1秒間に24コマを表示しているが、HFRでは48コマを表示する。これは3D映像を視聴する場合に、動きの早いシーンでも3Dが見やすくなる技術である。これまで、3D映像は見辛いと感じていた方でも、かなり自然な見え方になっていて全然疲れないと感じられると思う。ただ、48コマで表示することで、リアルに見えすぎることもあるそうで、顔のアップのシーン等では24コマに切り替えることで映画っぽさを残しているそうである。
「HDR」は「ハイ・ダイナミック・レンジ」のことで、通常のカメラでは黒くつぶれてしまう様な暗部と、白飛びしてしまう様な明るさが混在するシーンでも、暗い部分から明るい部分まで明るさの幅を広げて撮影するという方法で、上映する際にもHDR対応機器を用いることで、明暗の差がしっかり表現できる。
HDRに対応している「ドルビーシネマ」で視聴したところ、通常、真っ暗なシーンでもプロジェクターの光が当たっているスクリーンの形がぼんやり見えるが、HDRのおかげで本当に真っ暗になり何も見えない状態になる。真っ暗なシーンだけでなく、明るいシーンでも、暗い部分が引き締まって表示されることで、コントラストが高く鮮やかに見える。
「立体音響」については、客席を取り囲む様に配置されたスピーカーにより、スクリーンの外側にも世界が広がっている様な臨場感が感じられる。重低音も体が震えるような迫力がある。さらに、ドルビーシネマではDolby Atmosが導入されており、天井に配置したスピーカーも利用して、上下にも音が移動するような演出が可能で、音に360度取り囲まれた様に聞こえる。そのため、自然に見える3D映像と合わせて、あたかも映画のシーンの中に入っているような感覚になる。
これら全てを体感できるのは「ドルビーシネマ」対応の映画館という状況である。

TV番組のインタビューで、ジェームズ・キャメロン監督は、今後の作品は全て3Dで制作することにしていて、アバターは第5作まで制作進行中であり、第3作までは撮影も終わっていて、「アバターの10年になる」とのことである。
これを受けて、4Kの3Dの規格が策定され、対応機器(2眼一体型カメラ、プレイヤー、TV、プロジェクター等)が発売されることに期待している。
とにかく、現状では4Kの3Dは映画館で見るしかない、という状況なので、是非、足を運んで頂きたいと思う。