MENU

教員コラム

2025.05.31 - 共生デザイン学科  考えをカタチにする

淡野ゼミナールでは「考えをカタチにする」ことで得られる「気付き」をテーマに、モノやコトを具現化させる課題に取り組んでいます。本学は総合大学ですので美術大学のように入学前から専門的な技能を習得して入学される学生さんはほとんどいません。つまり技能的には初心者ばかりです。「実際にカタチにしてみたい!」「自分の手で表現したい!」という願望を抱いている人は多いと思いますが、いざそれを実現しようとすると尻込みしてしまう人も多いのではないでしょうか。

本ゼミではそういう気持ちを抱いている学生さんたちにこそ適したゼミナール運営を実施しています。具体的にはデジタルとアナログ両面での「考えをカタチにする」環境を整備しています。デジタル面ではレーザー加工機や3Dプリンターといったデジタルによる製造機器をゼミナール独自に所有し、ゼミ生であればいつでも利用できるようにしています。でもそうした機器をどう扱えば…と心配されるかも知れませんが、本ゼミでは3年生、4年生合同のグループ課題から始まりますので、既に習得している4年生と共に実施することで自然と理解が進みます。

またアナログ課題として、自らの手で制作する課題も実施します。手肌感覚が少なくなっている昨今であればこそ、こうした実習の必要性はむしろ高まっているといえます。ただ、こうしたアナログな課題は「不得意」と感じられる人も多いようですが、その多くは“単にあまりやったことがない”か、やり遂げる前に“途中でやめてしまった”というような人が多いようです。こうしたアナログ課題は、うまくいかなくても(恥ずかしがらず)頑張って完成させる、つまり、達成感をしっかりと体験することで「またやってみたい!」と思えるものなのです。何より具現化できる!という成功体験は自分自身の自信につながり、次はその表現をどう物事に活かすべきか、という事柄に気持ちが進んでいくものなのです。

そうしたデジタル・アナログ両面課題の中で、春学期(前期)と秋学期(後期)にそれぞれ1回づつ「基礎デザイン演習」でもご一緒している非常勤の影山先生を招聘し「革小物制作実習」を実施しています。本件については以前にもご紹介させて頂きましたが、今年度も同様に実施致しました。影山先生は私と同じ東京芸術大学の出身で革作品の個人ブランドを展開されておられます。

本実習は3・4年ゼミ生全員参加で実施します。3年生は「ペンケース」4年生は「スマートフォンショルダーケース」を制作します。4年生は3年時に春秋2回既に経験済みですので、やや難易度の高い、また自身の考えを反映する余白の多い内容になっています。制作したものが即自分自身の生活具になるとあって、学生たちの取り組み方(喰いつき)も熱心そのものです。あらかじめ提供された資料に基づいて各自がデザイン案(型紙)を考え、それをもとに制作します。デザイン案といっても、全体にわたる大きなデザインではなく、閉じる被せのカタチや、その閉じ方(革紐でぐるりと閉めるのか、バネホックというもので閉じるのか、等といった)を考える程度からはじまりますので、難易度はさほど高くはありません。

こうした制作は作業に集中するもので、静かな熱気がそれを物語るように学生皆没入していきます。具現化する手仕事にはそういう作用があるのです。「不得意」だけど「つくる力を身につけたい!」という人は是非私のゼミでこうした課題に取り組んでみてはいかがでしょうか。