2014.06.19 - 共生デザイン学科 淡野 哲 葉山ふるさと絵屏風プロジェクト
共生デザイン学科の淡野です。
私の研究室はモノをデザイン・制作するゼミで、その専門性を活かし学科の学生さんたちと共に実際にモノを描いたり造ったりする様々な活動を行っています。その中で現在、学科として取り組んでいる「葉山ふるさと絵屏風プロジェクト」という企画についてご紹介したいと思います。
これは、本学近隣地域である葉山町の上山口、木古庭両地域の方と、当地域山林を所有している大和ハウス工業と協力して、1960年代の里山の風景を絵屏風に描き仕上げるという企画です。
大学のH.P.でも紹介していますが、現在、本学科の兼子、二宮両先生と共に“若手”の先生たちが中心となって制作を進行しています。
http://univ.kanto-gakuin.ac.jp/main/news/2014050701.html
これまでに兼子先生を中心に行われてきた聞き取り会や、フィールドワークによって集められた情報をもとに、地域の方々や学生さんたちによって実際に絵を描く作業に入り、私はその監修を行っています。
制作会はこれまで2回実施し今月3回目が催されます。現在の状況は「下絵の下絵」を行っている段階にあります。この絵屏風は縦が約2メートル、幅が約3メートルと大きいものです。そのため実寸の一枚下絵1枚と、それを4分割した下絵用の紙4枚の計5枚で下絵を制作します。これは、大きいとはいえ、実寸の一枚下絵だけでは多くの学生が描けないこともあり、4分割した紙4枚をA、B、C、Dとし、それぞれに班で分けた学生さんたちに描いてもらいます。実寸の一枚下絵は、4枚をつなぐ言わば“司令塔”のように全体を見渡すための簡略な配置図を描いていきます。
下絵を描くには、その描くものをどこに配置するかといった「構図」をしっかり決めなければなりません。実制作を始める事前に絵屏風の「構図」を決める「“言葉による”構図」、つまり“絵屏風の脚本”が地域の方々によってまとめられています。しかし、脚本は言葉ですから、その通り絵にできるほど簡単ではありません。そこで、全体が見渡せる実寸の一枚下絵と4分割した班とが常にそこに描かれる物事を確認しながら進めます。大きいものを制作するときにはこうした作業が必要になるのです。
次に進める過程で問題になるのが“イメージギャップ”です。つまり、1960年代を知っている地域の方々と学生さんたちとのイメージの共有をしていかなければなりませんが、60歳代から70歳代の方々がほとんどの地域の方々からすればごく当たり前であった生活の情景も、学生さんたちにとっては遠い昔の出来事で、想像の世界の情景でしかありません。そこで会場の周囲に当時の風景や人々の営み、行事等の写真資料が設置され、地域の方々が学生さんに少しでも当時のリアリティが感じられるよう説明に努めていただいています。
また、制作会の途中で絵屏風に描かれる主要な場所(棚田や寺社、といったもの)を実際に見学しに出かけたりもしています。やはり「百聞は一見に如かず」。実際に見ることに勝るものはありません。こうして現在も着々と制作は進行しており、今から完成が待ち遠しいのですが、そのための地道な活動はこれからも続いていきます。
淡野 哲(共生デザイン学科)