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教員コラム

2017.12.25 - 共生デザイン学科  椅子は座るためのもの?−既成概念を疑う

当たり前ですね。「椅子は座るもの」。そう思っている人が殆どだと思います。

学生たちに訊いても、まずそういう答えが返ってくる。したがって、たいていの場合、椅子の評価はまず座り心地。それからカタチ、材料となるのではあるまいか。「いちばんいい椅子は何ですか」というよくある質問も、たぶんこのため(使い方も座り心地の指標もたったひとつしかないかのようです)。

でも、モノ(椅子)はひとつの機能だけではないし、椅子は座り心地だけで評価されるものでもありません。 おまけに、その座り心地でさえいろいろある。 仕事をするための椅子とくつろぐための椅子とでは求める座り心地や形が違います(ソファで仕事はできません)。

「えっ」という声が聞こえてきそうだけれど、そういう人だって実は経験しているはずなのです。たとえば、カジュアルな服とドレッシーな装いは場面に応じて着分けているはずだし、プリントされた絵柄が気に入っているお皿だって、飾ったりするのではありませんか。

だから、椅子についても、お皿と同じように考えて飾ってもいいというふうに思いつくのは当然です(そうでしょう?)。あるいは、モノを飾るための台、スペースとして使うのだってぜんぜんかまわない。もちろん、他のものについても同じこと。

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座ることを目的としない椅子は、たとえば倉俣史郎作「ミス・ブランチ」、アレッサンドロ・メンディーニの「ラッスー」等があります。映画やテレビドラマにも登場したチャールズ・R・マッキントッシュのラダーチェアも座れないことはないけれど、むしろ眺めたり、飾ったりするのに向いている。写真のジオ・ポンティ作の超軽量椅子スーパーレジェーラもそんな気がします(アルヴァ・アアルトのスツールは小さなコーヒーテーブルのようにも使えます)。

先入観を捨てて、ちょっと見方を変えて物事に向き合えば、きっとあたらしい発見があるはずです。レポートや課題に取り組む時も実生活の場面でも、常識や既成概念の束縛から離れて自由になろうと心がけるのがよい、と考えるのです。

ところで、この時期の3年のゼミ生は、横浜シルク博物館で開催される「シルキー・ウィンター・フェスティバル」の会場構成の準備の真っ最中。12月1日から1月8日まで開催です。本コラムがご覧頂ける時にはもう過ぎていると思いますが、メインエベントの12月17日には本学科山﨑ゼミの学生によるファッションショーもあり、このためのインスタレーションも行っています。