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教員コラム

2019.10.28 - 共生デザイン学科  本学図書館分館との共催による学芸員課程の企画展示《いき クールな江戸の美》

昨年の柳宗悦『手仕事の日本』をテーマとした展示を引き継ぎ,ことしもまた日本人の生活や美意識にフォーカスしたいと考えました。そこで柳の民芸運動とちょうど同じころ,昭和5年に発表された九鬼周造の『「いき」の構造』に注目しました。この本は,8年にわたる留学を終え帰国した九鬼が,植民地化したような町の変貌ぶりを憂い,近代日本のめざす方向から外れたものとして斥けられつつあった前時代の美に西洋哲学の分析的思考によって光をあてたものです。

 

さて「東京2020」を来年に控え,「インバウンド」(外国人旅行者)という語が以前にもまして聞かれるようになっています。日本政府観光局の調べによれば,この約5年のうちにその数は3倍に増加し,昨2018年には3000万人を超えたそうです。都道府県別訪問率ナンバーワンは東京で,なかでも人気のスポットは浅草。北斎,国芳など世界的に高く評価され,海外でもファンの多い浮世絵,そこに漂う江戸情緒に惹かれ,下町に関心が寄せられているのではないでしょうか。

では,その江戸情緒とはなんでしょうか。

 

東京スカイツリーのライティングデザインに目を向けてみましょう。当社のホームページによれば,3つのスタイルは江戸の原風景を継承するもので,心意気の「粋(いき)」,美意識の「雅(みやび)」,賑わいの「幟(のぼり)」とのことです。先端テクノロジーと伝統文化との美しい融合がみられます。

 

本展では,昨今のこうした動きをとらえ,江戸深川の流行語として1770年ころから使われ始め,19世紀前半(天保期ころ)には江戸町人の生活に定着していたと言われる「いき」について,九鬼の言及にそってその美感を捉え,江戸時代の浮世絵,洒落本や滑稽本などの戯作,さらには歌舞伎を通じて町人社会に拡大した「いき」好みを視覚的に御理解いただけるような構成としました。

図書館所蔵の文献や浮世絵(江戸時代の実物版),また江戸時代から現在までつづく版元で当時の版木をもとに復刻された団扇絵などを紹介,最終日にはミニセミナーも開催しました。

 

写真1 学生の制作による展示ポスター

 

写真2 ミニセミナーの風景