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教員コラム

2018.05.25 - 共生デザイン学科  学芸員課程の展示実習をとおして「暮らし」や「ものづくり」について考える

人間共生学部共生デザイン学科では、希望すれば学芸員課程を履修することによって

学芸員資格を取得することができます。

これはいわゆる国家資格で、国で定められた博物館法に則ってカリキュラムが構成され、

それらの単位を満たせば卒業と同時に資格証が授与されます。

しかしこの資格があるからといって、誰ものがその職につけるかといえばそうではなく、

供給数に比べ需要数がすくないため狭き門であることや展覧会の企画をするうえでは

調査研究が必要で研究職であることから大学院への進学も視野にいれておかなければ

ならないからです。

それならばなぜ、そのような資格課程を置いているのかと疑問にもたれるのではないでしょうか。

担当教員であるわたし自身は、この課程が共生デザイン学科の学びの補助線になると考えています。

人間の暮らしについて根本的にまた具体的にさまざまな角度からアプローチする本学科の

どの分野にも共通する姿勢は3つのM、すなわち

「みる」(観察)、「みいだす」(発見)、「みせる」(提示)

であろうと思われます。

文化芸術、自然環境等のさまざまな現象にたいして、どのようなまなざしを向けられるのか、

そこにこれまで気づかなかったことはないか、

新たな気づきがあったならば、それをどのように表現し伝え、考える機会とするのか。

学芸員課程では資料論や展示論、メディア論そして実習をとおして、その基本を学ぶことに

なるでしょう。

4年生になると学芸員課程の最後の仕上げとして館園実習に出ますが、

その前に3年生では学内で博物館実習をします。

今年度春学期は、日本民藝館の「柚木沙弥郎展」および併設展見学

(見学館や展覧会に関して事前にリサーチ、事後に展示内容について報告)を実施、

そのほか自主学習として博物館で実施されているラーニング・プログラムへの参加・報告、

そして現在は7月初旬から実習として開催する小さな展示に向け準備をすすめています。

今回の企画は、近年、とくに若い世代の間で顕著になりつつある手仕事の世界への

関心を背景に柳宗悦の『手仕事の日本』を題材にしたものになります。

柳宗悦は、大正時代末期に手仕事により作られた日常の生活用具のなかに

美を見出した思想家で、それらを「民藝」と称して、仲間とともに全国を旅し

優れた民芸品を収集、昭和11年に東京・駒場に日本民藝館を創設しました。

実習では柳らのようにはできませんが、『手仕事の日本』「関東」編に

あげられている結城紬や益子焼、箱根寄木細工や鎌倉彫などについては手持ちの物を

使用し、また東京の老舗がつくる櫛や組紐などは学生らが店頭で選び購入して

展示する予定です。

001

日本民芸協会編『手仕事の日本』新装・柳宗悦選集2, 春秋社, 1977年.

002

展示予定の箱根寄木細工文箱(個人蔵)

なお展示は、図書館分館の協力を得て、館内カウンター前のガラスケースにておこないます。

企画する学生にとっても、また御覧いただく方々にとっても、日用品へのまなざしが変わる機会となれば幸いです。