ゼミナールについて

私が大学生だった頃の学生生活を振り返ると、思い出されるのは授業で学んだ内容ではなく、ほとんどすべてがゼミナールで学んだことです。
私は大学4年間のなかで、4つのゼミナールに所属していました。今回のコラムではそのうち2つのゼミナールについて紹介します。
1つめは大学2年生から仲間数名と自主的に活動した「風土ゼミ(亀山ゼミ)」です。1990年代当時、和辻哲郎氏の「風土論」を批判的に継承したフランス人の地理学者・哲学者オギュスタン・ベルク氏の『風土としての地球』を皮切りに、日本国内の環境系研究者や活動家らが自然環境と社会環境を統合的に捉える「風土」概念に注目していました。私も「私が学びたいのはこれだ!!」と思いました。ところが、私の在籍学科は自然環境について学ぶ理系の学科でしたので、哲学書を独力で読み込むことは難しく……そこで、日本思想・哲学がご専門の他学科の亀山純生先生に「週1回、先生のご都合の良い時間帯でいいので風土論の文献輪読ゼミをやっていただけませんか」と直談判したのです。亀山先生は嫌な顔ひとつせずに「遅い時間になってもいいなら」と、授業がすべて終わった夜の時間帯に、終わりの時間は特に決めずにとことん、それこそ終電ギリギリまで、私たちの文献解釈を深めるために専門的な哲学用語や概念を丁寧に解説してくださりました。和辻哲郎の『風土』が読み終わったあと、亀山先生から「この1冊で終るのはもったいない」と言っていただき、志賀重昂氏の「風景論」や桑子敏雄先生の「空間の履歴」など、次々と、たくさんの本に囲まれた小さな研究室で膝をつき合わせるようにして学びました。「風土ゼミ」での学びは、今も私の研究者としての指針であり基盤となっています。
2つめは大学3年生から正式に所属した「水環境保全学研究室(小倉ゼミ)」です。小倉ゼミには所属するまでの選考申込み以前にドラマがありました。そもそも私が小倉紀雄先生に初めてお会いしたのは大学ではなく、多摩川の河川敷でした。大学1年生の時に参加した「多摩川レンジャー育成講座」(私は第1期生でした)に関連した水質調査の講師が小倉先生で「私も東京農工大学環境・資源学科の学生です!」と自己紹介したところ「今度、研究室にいらっしゃい」と誘っていただいたことがきかっけです。大学生の頃の私の活動フィールドは多摩川だったので、小倉先生が理事を務めるNPO多摩川センターの活動ボランティアや、府中郷土の森のなかにある「多摩川ふれあい教室」スタッフとして、今から思うと、自然体験教育の専門的な知識や技術を、その道の一流の方々から直に教わる機会を得て、自由に伸び伸びと活動していました。そのような自由奔放な(ある意味、大学の授業の枠に収まらない)私を見ていた小倉先生は、正式なゼミナール選考申込み期間の個別相談の場で「さっこちゃんは、僕の研究室だったらやりたいことができると思うけれど、他の研究室では絶対にやりたいことできないよ!」と、いつもの穏やかな口調とは異なり、はっきりと仰ったのです。それは、ゼミナール選考申込期限の前日のことでした。実は私はその時「小倉先生には大変申し訳ないのですが、大学入学当初の想いがランドスケープデザイナーになりたくて、わざわざ前の大学を中退してまで入ってきたので、やっぱり造園が専門の〇〇先生のところに申し込もうと思います。」とお詫びに伺ったのでした。ところが、前述のように、小倉先生にはっきりと言われてしまったので、最後の最後まで悩みぬいて、正式な所属ゼミナール選考申込期日ギリギリに、私は「尊敬する小倉先生がそこまでおっしゃるのならば従ってみよう」と小倉先生のゼミナールに申込みました。そして、その選択は、やはり本当に様々な意味で正解だったのです。そのうちのひとつとして、私が今いる関東学院大学のポストは水環境を中心とした自然共生デザインでの募集だったのですから。人生は面白いものです。
このように大学生の頃の私を振り返ってみると、若気の至りだらけ、怖いもの知らずもいいところ、だったと思います。そして、そのような勢いだけで突き進む大学生の頃の私を、4つのゼミナールの恩師の先生方は本当にあたたかく受け容れてくださりました。
私は今、その頃の恩師の先生方のことを思い出して、私に注いでくださっていたお気持ちを感じながら、学生たちと接しています。

おわり

公開空地をハーブ香る憩いの芝生広場に

関東学院大学共生デザイン学科の二宮ゼミナール(専門:自然共生デザイン)ではキャンパスに隣接する横浜南共済病院の職員有志「花プロジェクト」の皆さんと施設課の皆さんと協働して「ハーブガーデンづくり」(※)に取り組んでいます。

患者さんや子どもたちにも安心して触れていただけるように、農薬や化学肥料を一切使わない有機栽培による「ハーブガーデンづくり」に挑戦しています。

二宮ゼミナールの学生たちは有機農業の専門家による指導を受けて、クワやシャベルを手に、土づくりからおこないました。また、様々なハーブの特徴を学習して、季節ごとに香りや花々を楽しむことができるハーブガーデンをデザインしました。

5月から6月にかけて200株以上の苗を植え、その後も毎週のように現場に通い、雑草を抜き、ネコやカラスがいたずらしないように麻ひもを這わせるなど、自然と共生する暮らしと社会のためのデザイン実践に取り組んでいます。

8月には大きく育ったバジルや甘い香りの花を咲かせるカモミールなどを収穫して味わう「ハーブを楽しむ会」を開催しました(関東学院大学ホームページTOPICSに当日の様子が掲載されています)。

これからもみんなで協力して、地域にひらかれたハーブガーデンをつくっていきます。

※「横浜みどりアップ計画」の横浜市民有地地域緑化助成金を受けて実施している「六浦東みどりアップの会」の地域緑化プロジェクトに社会連携教育の一環として参画しています。

 

 

なぜデザインを学ぶ大学生が自然体験活動に取り組むのか

今年度(2023年度)の関東学院大学の共生デザイン学科・二宮ゼミナールでは、3・4年生16名が3つのチームに分かれて「自然と共生する暮らしと社会のためのデザイン」に取り組んでいます。

 今回ご紹介するのは、6年目を迎えた「小田原みかん農園再生プロジェクト」に取り組む「小田原チーム」。耕作放棄地の再生活動から生まれた“みかん”と“米粉”を使用し、かつ、若者世代にも好まれるような新しい和菓子=“シン・和菓子”の企画プロデュースが今年度の演習課題です。具体的には、小田原市内の「和菓子うめぞの」さんに、どのような和菓子を作るかの試作提案(商品企画)と、パッケージやリーフレットの制作(グラフィックデザイン)をおこなうのですが、自然共生を専門とする二宮ゼミの真骨頂は、これらモノのデザインだけでは終わりません。

なぜ「小田原みかん農園再生プロジェクト」の一環として“シン・和菓子”を企画プロデュースするのか。なぜ耕作放棄地の再生活動から生まれた小田原市産の原材料にこだわるのか。その理由を、デザインを学ぶ大学生がアタマとココロとカラダで理解するためには、再生活動の現場に足を運び、その場所の自然を体験することが重要です。そして、その場所の魅力と、そこで生き生きと活動する人びとの姿に直接触れたときに、どのような感情が湧き出てくるのか。その感情こそが、デザインコンセプトの核になるのです。

「小田原市内の耕作放棄地の問題を解決するためには、問題そのものだけでなく、再生活動に取り組む人びとの存在を多くの人に知ってもらい、その場所と活動の魅力を伝えることで参加者が増えて、再生活動が持続的に発展するような“シン・和菓子”をつくりたい……!!」

デザインを学ぶ大学生が、心からそう願ったとき、これまで耕作放棄地の問題や再生活動に無関心だった人びとの“心を動かすデザイン”を生み出すためのスタートラインにようやく立つことができます。みかん・米粉・お茶・和菓子などの生産者さん同士をつなぎ、そして、生産されたモノと消費者をつなぐために、デザインの役割は重要です。

自然と共に生きる暮らしと社会のためのデザインを学ぶ大学生にとって、自然体験活動はデザイン実践そのものです。

地域支援商品「みかん米粉どら焼き」の企画プロデュース

共生デザイン学科の二宮咲子です。二宮ゼミナールでは、フィールドワークに基づくデザインの教育と実践に3つの社会連携プロジェクトを軸として取り組んでいます。「公園づくりプロジェクト」(2014年~)、「農園づくりプロジェクト」(2018年~)、「園庭づくりプロジェクト」(2020年~)です。今回は「農園づくりプロジェクト」から生まれたLocal Product「みかん米粉どら焼き」についてご紹介します。

「みかん米粉どら焼き」誕生のきかっけは、今から4年前(2018年)、シニアネットワークおだわら&あしがらという市民グループが取り組む、荒れ果てたみかん農園の再生活動に、二宮ゼミナールが参加するようになったことです。「輸入オレンジの増加と農家の後継者不足で耕作放棄地が増えている」「獣害や不法投棄・犯罪の温床になってしまう」――学生たちは、みかん農園の再生活動に参加しながらシニアの皆さんと共に学び、自分たちに何が出来るのかを考えました。

真夏の強い日差しの下で汗をかきながら農作業に勤しむシニアの皆さんの生き生きとした姿や、楽しそうに仲間と交流する様子を間近に見て、学生たちは、この活動が定年退職後の生きがいや仲間を見つける居場所になっていることを実感。この活動を継続するために、メンバーと活動資金の持続的な確保が課題となっていることに着目しました。

そして、シニアが育てたみかんを商品化して活動資金を得ると同時に、活動を広報するために「みかん米粉どら焼き」の企画プロデュースが始まりました。どら焼きの皮には、小田原市内で耕作放棄田の再生活動に取り組む志村屋米穀店の米粉を使用。売上の一部が耕作放棄地の再生活動の支援金になる地域支援商品であることを伝えるためのロゴマーク入りの紙帯パッケージとリーフレットを二宮ゼミナールが制作。小田原の四季折々の暮らしに寄り添った和菓子をつくる「梅園」の協力を得て、2022年3月、ついに「みかん米粉どら焼き」の製造・販売が始まります。

 

コロナ禍の自然のなかでのフィールドワークとオンライン同窓会

コロナ禍の大学生活、出来なくなったことや制限されたことにとかく意識が向きがちですが、2020年度を振り返ってみると、コロナ禍でも出来たことや初めてやってみたことも数多くありました。私にとって特に印象に残っているのは、自然のなかでのフィールドワークと、オンライン同窓会です。

自然のなかでのフィールドワークは、3年生が対象のプロジェクト科目とゼミナール演習、4年生が対象のゼミナール演習と卒業研究の一環として、緊急事態宣言が解除されている期間に実施することができました。屋外とはいえ3密を回避するため、1回のフィールドワークの参加人数を2~3名ずつに限定して実施しました。その結果、私が学生を指導・引率する回数は、例年の約5倍、3カ月もの間、ほぼ毎週末が授業日となりました。それでも、コロナ禍の自然のなかでのフィールドワークは、ひとりひとりの学生にとっては、教員や仲間と直接会って、話をして、協働することのできる唯一の場であり、学生にとっても教員にとっても、新たな意味合いをもつ重要な学修プログラムとなりました。

 

次にオンライン同窓会についてですが、フィールドワークとは逆に、緊急事態宣言期間中にあえて開催しました。その方が、家にいる人が多く、かえって参加しやすいのではないかと考えたからです。2020年度現在、二宮ゼミナールのメンバーは、社会人6年目から新3年生までの約60名ですが、オンライン同窓会にはおよそ半数が参加。企画や運営は、二宮ゼミ卒業生有志5名ほどが中心となっておこないました。「卒業生と在校生をつなぎたい」という私のオーダーに、写真入りの卒業生の紹介資料を作成して応えてくれたり、Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用した少人数での交流トークを用意してくれるなど、オンライン同窓会は在校生からも大変好評でした。久しぶりに会った卒業生たちの話や画面越しに見る顔つきからは、デザイナーやWebライター、大学職員、製造業や信用金庫の営業マン、公務員としてのキャリアを積み、また、結婚して家庭を築くなど、それぞれの道で、コロナ禍でも充実した生活を送っている様子が伝わってきました。

 

 

まもなく始まる2021年度。引き続きコロナウィルス感染症予防には万全を期さなくてはなりません。今年度、コロナ禍でも実現することができた、自然のなかのフィールドワークやオンライン同窓会のように、対面でもオンラインでも、来年度も実りある教育・研究を続けていきたいと思います。

公園で学ぶ、農園で育つ、自然と共に生きる社会をデザインするチカラ

共生デザイン学科の二宮咲子です。環境・コミュニティデザイン分野で「エコロジカルデザイン」「自然共生社会論」「自然共生デザイン論」「ソーシャルビジネス」の講義科目と、「自然共生デザイン演習」「教養ゼミナール」「ゼミナールⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ」「卒業研究」の演習科目を担当しています。私の興味・関心領域は、「自然と共に生きる社会の望ましいあり方」についてです。倫理学・社会学・法政策学と環境科学・生態学を基盤とする文理融合の学際的なデザイン教育・研究活動をおこなっています。

ところで、皆さんは「自然と共に生きる社会の望ましいあり方」について、考え、ディスカッションをしたことはありますか。「ごみをポイ捨てしない」「水筒を持ち歩く」など環境のことを“個人的”に考え、実践している人は多いと思います。しかし、“社会的”に考え、実践したことがある人は少ないのではないでしょうか。

そこで、わたしたち共生デザイン学科では、2・3・4年生が対象の「ゼミナールⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ」と4年生が対象の「卒業研究」(担当教員:二宮咲子)を通して、「自然と共に生きる社会の望ましいあり方」について考え、実践する「三川公園プロジェクト」(2015年度~)と「小田原みかん農園プロジェクト」(2018年度~)に取り組んでいます。

ひとつめの「三川公園プロジェクト」のフィールドは、海老名市内・相模川沿いに広がる自然豊かな神奈川県立相模三川公園です。指定管理者のアメニス相模三川グループ(代表企業:株式会社日比谷アメニス)と関東学院大学人間環境研究所の共同研究「都市公園のコミュニティ・デザイン・センター機能およびレンジャー制度の実証的研究―神奈川県立相模三川公園をフィールドとする産学連携の試み―」(研究代表:二宮咲子)として2014年にスタートしました。これまでに「公園づくりワークショップ」「水辺の生きもの観察会」「冒険遊び・昔遊び」「減災教育キャンプ」「ジャングルDEウォークラリー」「Herb Water」「自然わくわく冒険隊」など、都会に住む子どもたちが自然に興味関心を持つきっかけとなるような自然体験プログラム開発やイベント企画プロデュースをおこなってきました。

今回2018年度の卒業研究として4年生の三浦恒平さんが開発した自然体験プログラムと、ゼミナール演習課題として3年生の加賀谷翠葉さん、鳥海さくらさん、水野創太さんを中心に企画プロデュースした「自然わくわく冒険隊~みつけて、きいて、さわって、かいで~」は、これからオープンする「自然観察園(仮称)」予定地に特別に入って、五感を使って自然を体験するネイチャーゲームです。“みつけて(視覚)”のミッションでは大きく鮮やかな黄色と黒の縞模様が目立つ“ジョロウグモ”を見つけ歩き、“きいて(聴覚)”のミッションでは川の近くで様々な鳥の声に耳を澄ませ、“さわって(触覚)”のミッションではドングリやクルミと人工物の触り心地の違いを確かめ、“かいで(嗅覚)”のミッションでは青い草や枯れた葉っぱの匂いをかぎ分けました。二宮ゼミナールの学生たちがインストラクターとして一緒にまわるため自然に慣れていないお子さんも安心して楽しめ、ミッションクリア時にはリーフレットに手作り葉っぱスタンプを押すなど、参加者の目線に近い学生ならではの工夫がとても好評でした。

また、新しく開園する「自然観察園(仮称)」に愛着をもっていただき、自然を守り育てる人を増やしていくことを目的として、“○○の森”と“○○の広場”という2つの名前づけワークシートを設置しました。“みどりくんの森”“クルミの森”や“風の広場”“みんなの広場”という名づけからも、子どもたちが五感ミッションを通じて自然を体感して愛着をもってくれたことがわかり、学生たちによる「自然わくわく冒険隊」は大成功でした。

写真:二宮ゼミナール学生によるイベント企画・準備ミーティング
(向かって左端はプログラム開発者4年生の三浦恒平さん)
写真:三つ折りリーフレットの制作
(3年生の小室清香さんと柴山妃夏さんを中心に制作)
写真:県立相模三川公園の未開園地(「仮称 自然観察園」予定地)
写真:イベント当日の受付
(看板制作から当日の受付まで2年生が担当)
写真:自然わくわく冒険隊の参加者とインストラクターの3年生
(水野創太さんと鳥海さくらさんは今回イベントの学生リーダー)
写真:“みつけて(視覚)ミッション”に挑戦する参加者と
インストラクターの3年生(オレンジ色のつなぎを着用)
写真:“○○の森”名づけに挑戦する参加者とインストラクターの3年生(緑色のつなぎを着用)
写真:2018年11月17日「自然わくわく冒険隊」実施時にはカワラノギク(絶滅危惧種)が可憐に咲き誇っていました
写真:お昼休みに県立相模三川公園管理事務所の方々から市川農園(海老名市)の野菜たっぷり地産地消の豚汁をいただきました
(向かって左から2番目は学生リーダーの加賀谷翠葉さん)
写真:2018年11月17日午後は「公園づくりワークショップ」に参加
(園長・技術者とディスカッションする二宮ゼミナール3年生)

このように、自然と共に生きる社会をデザインするチカラを身につける学修の場は、大学のキャンパスのなかだけでなく、自然豊かな公園にも広がっています。

もうひとつのプロジェクト、2018年度から取り組んでいる「小田原みかん農園プロジェクト」のフィールドは、小田原市早川地区の山林に広がる「SNOAみかん農園」です。こちらの活動も、これからの展開がとても楽しみなプロジェクトです。自然と共に生きる社会をデザインするチカラが農園で育っていく、その取り組みについては、次回の教員コラムでお伝えできればと思います。

※教員コラムに掲載の写真は関東学院大学二宮ゼミナールが大学教育・研究活動と関連する広報での使用について同意を得て撮影したものです。無断転載・使用はお控えください。