学部・コース・学年を超えた演習科目

マーケティング・リサーチ演習は人間共生学部コミュニケーション学科の授業ですが、他学部の学生も受講できます。2025年度は、コミュニケーション学科に加えて、経営学部のビジネスリーダーシップコースや流通マーケティングコースの学生が参加し、3年生と4年生を合わせて70名以上が受講しました。大規模な演習科目として、学部やコースの枠を越えた多彩な学生が一堂に会しています。普段は交流する機会の少ない学生同士がグループを組んで課題に取り組むため、最初は戸惑いもあります。しかし回を重ねるごとに、それぞれの専門性を活かした議論が展開され、学びの広がりを実感できるようになります(図1)。

図1 演習の風景(写真はぼやかしいます)

異なるバックグラウンドを持つ学生が協力することで生まれる発見こそ、この演習の魅力です。今回の演習では、スターバックスコーヒー、タリーズコーヒー、ドトールコーヒー、コメダ珈琲店の主な4つの主要なカフェチェーンの消費者のブランド評価について調査を行いました。図2にある、ネット・プロモーター・スコア(NPS®)と呼ばれるブランド評価の手法を用い、グループでカフェの特徴を洗い出す質問を自分たちで考え、調査を実施しました。

図2 ネット・プロモーター・スコア(NPS®)によるブランド力の評価方法

その結果の一部として、図3は4つのカフェチェーンのブランド評価の比較です。

図3 各チェーンのNPSによるブランド評価の比較

コメダ珈琲店が最も高い評価を獲得し、スターバックスとタリーズが同程度で続き、最後にドトールが位置しました。各カフェチェーンの特徴として、フードのおいしさ、店内の雰囲気、利便性に違いがみられたようです(図4)。

図4 各チェーンの特徴の違い

このように、マーケティング・リサーチ演習は、多様な学生が協働しながら実践的な課題に挑戦できるのが大きな特徴です。関内キャンパスならではの開かれた学びの場として、学生一人ひとりに新たな視点と経験をもたらしています。

 

ランチーサーベイから見えてきた個食の課題

関内キャンパスはビルキャンパスという建物の特徴の他に、学食がないという問題があります。
関内キャンパスの学生の昼食の消費行動の実態を調べるため、大友ゼミのプロジェクトとして『経験サンプリング』と呼ばれるマーケティング調査手法を用いたランチサーベイに取組んでみました。この経験サンプリングとは、その時間、その空間で、何をしているかを、オンタイム調査し、ありのままの実態を検討する方法です(図1)。

 

ランチサーベイでは2023/11/30~12/15の期間に、1週間連続で、「その日のお昼を何を食べた(食べる予定)」等を尋ねる質問をしました。その結果、昼食の費用として500円未満まで人が58%で(図2)、月・火はキャンパス内が多いもののキャンパス周辺のお店は少なく(図3)、作ったお弁当の人が30%以上(図4)、一緒に食べた人は月・火は「大学の友人・知人」が多いものの全曜日で「自分一人」の割合がかなり多い(図5)という結果でした。

このような傾向は大規模なweb調査等<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001296.000007815.html>でも指摘されています。お金だけの問題ではなく、個食という現代の社会気質も反映した結果だと考えられます。ビルキャンパスがこの問題に、時間×空間という場作りとしてどのように対応していくのか考えないといけな課題としてみえてきました。
注)ゼミの一環として行った調査であり回答者に偏りがあるため、必ずしも関内キャンパスの学生全般の結果ではありません。

ハンバーガー・チェーンのブランド力を調査する

コミュニケーション学科のマーケティング・リサーチ演習では、実際の消費者を対象にした調査を学生が中心となり実践します。
今回はファストフードのブランド力の調査を企画しました(図1)。

主要な5つのハンバーガー・チェーンの各利用者を対象に調査し、2500名以上の回答データを分析しています(図2)。

調査では、図3にある、ネット・プロモーター・スコア(NPS®)と呼ばれるブランド評価の手法と、演習の学生グループが提案したファストフードの、信頼・品質、メニュー・価格、満足度、店舗・接客、こだわり、の5つの側面を評価する特徴質問を用いました。

その結果、23年6月の調査時点でブランドの評価が高かった順は、フレッシュネス>モスバーガー>バーガーキング>マクドナルド>ロッテリアでした(図4)。

各チェーンのブランドの違いは、図5の特徴質問の結果から分かります。フレッシュネスやモスバーガーは信頼・品質やこだわりの側面で、バーガーキングは満足度で、マクドナルドはメニュー・価格、満足度、店舗・接客で優れており、ロッテリアは他のチェーンと比べて特徴の評価が高くなかったです。それぞれのチェーンの特徴の違いがブランド力に反映されていると考えられます。本学科では、このようなマーケティング・リサーチの実践的な方法を学ぶビジネス心理の人材育成にも力を入れています。

コンビニのブランド調査のマーケティング

消費者はコンビニをどのように使い分けているのか?身近なブランドの棲み分けについてマーケティングと心理学を使って調査をしてみました。調査は、2年次のゼミ内の研究プロジェクトとして学生が企画したものです(図1)。

今回は、大手コンビニ3社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)をいずれも1ヶ月以内に利用したことのある消費者686名を対象に、ネット・プロモーター・スコア(NPS®)と呼ばれる「あなたは、”コンビニ名”を、友人にどの程度すすめたい思いますか?」という0〜10点で評価するマーケティングの手法を用いて実施しました。その結果、セブン>ローソン>ファミマの順で消費者はブランドを評価していました(図2)。


さらに、セブンイレブンのNPSと関連が強かったのは「オリジナル商品が充実している」(図3)、ローソンは「ホットスナックが美味しい」(図4)、ファミリーマートは「サービスが多様なニーズに応えている」(図5)という特徴がみられました。


このように各社ごとにブランドを価値づける要因が異なることが分かります。ゼミではこのような身近な消費者行動を調査するプロジェクトを通じてマーケティングに応用する心理学について学びます。

コロナ禍からの復興のきざしは?

新型コロナウイルス感染症の脅威が今現在も続いています。

図1は初の緊急事態宣言が発出された2020年4月から感染者数と主な対応をまとめたものです。コロナ禍から私たちはどれくらい復興をしているのでしょうか?災害からのくらしむきの復興について「復興カレンダー」が開発されています。

図1 日本国内の感染者状況(210613時点 厚生労働省オープンデータ(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html)より作成)

(図1、図2、図4はクリックするとPDFで開きます)

図2は2018年の西日本豪雨災害における復興カレンダーの研究です。これまで災害復興のプロセスとして、災害の全体像の認知から地域経済の復興という経緯をたどると指摘されています。現在、この知見を応用したコロナ禍の復興カレンダーを兵庫県立大学・木村玲欧教授と開発しています。本学科の『マーケティング・リサーチ演習』の消費者調査(図3)でもこの復興カレンダーを導入しました。

図2 西日本豪雨災害の復興カレンダー(Ohtomo, S., & Kimura, R. (inpress). Risk Analysisより作成)

 

図3 マーケティング・リサーチ演習の消費者調査の取組

 

図4はその結果の一部です。コロナ禍の生活復興には波があり、その中でも“外食ができるようになった”はGoToキャンペーンがきっかけだったようです。一方、家計や地域経済への影響へは今現在も続いているようです。このような社会問題の解決を目的した社会的マーケティングからのアプローチが復興のきざしを発見する重要な役割を担っているかもしれません。

図4 コロナ禍の復興カレンダー(一部)と感染者数(月間)の関連*開発中のため数値は速報値で今後変更になるかもしれません。