学生たちが展示会を開催
毎年、プロジェクト科目のフィールドとして学生引率するカンボジア王国シェムリアップにある通称「伝統の森」、正式名称IKTT(Innovation of Khmer Traditional Textiles organization)があります。
ここは内戦によって消えかけていたカンボジアの伝統的な絹織物を復活させるために、荒廃した大地に森を再生させ、またカンボジア国内に散らばった絹の織り手・染め手の技を持った職人たちを集めた場所です。
毎年ここに学生を連れてゆき、絹織物が一枚一枚出来上がるプロセスに、自然環境と社会環境の両輪が欠かせないことを学習してきました。そして昨年の7月には、その学習成果として、大学近隣のオープン・スペースをお借りして、「蘇るカンボジアの絹絣展」が開催されました。
学生たちなりにどのようにスペースを生かして展示すればいいか考え、来場者の方たちが絹の織物端材からクルミボタンを作るワークショップ・コーナーを企画したり・・・と工夫した展示会場が出来上がりました。





プロジェクト科目〜カンボジア伝統の絹織物を訪ねて〜
本学科のプロジェクト科目のひとつとして、カンボジアの絹織物を復活させる村を訪問するプロジェクトがあります。このプロジェクト科目の概要は以下の文面(学生への説明文です)の通りです。
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本プロジェクトは、カンボジアの伝統的な絹織物の技術を再生復活・発展させようとするI K T T
(Institution of Khmer Traditional Textile:クメール伝統織物研究所)の活動の理念を理解し、各自がI K T Tへのデザイン提案を試みるものである。
https://ikttjapan.blogspot.com/p/blog-page_22.html
カンボジアはかつて自国民の大虐殺を含む内戦の時代を経験した。その歴史の中で多くの人々が亡くなり、また国土が荒廃し、かつて国中で生産されていた伝統的な絹織物の生産も衰退した。
I K T Tはそうした伝統的な絹織物を、①社会環境の復興(技術の伝承と生産と生活の支援)
②自然環境の復興(カイコの育成や染め材となる草木や森)の両面から取り組むプロジェクトであり、現在は世界中から求められる織物が生産されるに至っている。
学生にはI K T Tの理念とともに、現地にある人・モノ・自然の資源による手仕事から、どのように絹織物が生み出され、人々の生活や社会を再生させているのか理解してほしい。その上で、各自が何らかのデザイン提案をすることにより、I K T Tの世界への発信に貢献してもらいたい。
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実はこのプロジェクトは、コロナ禍期間を経て、しばらく実施できずにいましたが、2025年度からは、再び実施されることになりました。
履修学生には、①事前学習(カンボジアの歴史、「織る」・「染める」工程の理解、)②現地調査(作り手へのインタビューや実習)、③プロジェクト成果実践(現地調査データの整理と絹織物の店舗実習)など、かなり濃厚な体験をしてもらう予定です。





デザイン・プロジェクトーいすみ鉄道のブランディングー
共生デザイン学科では、各教員がデザイン・プロジェクトという科目を担当しています。
この科目では、学生たちが学外の地域・団体・企業にお邪魔をし、学生たちのデザイン提案によって、それぞれの現状における課題解決を目指します。デザイン提案の内容は、モノだけではなく、イベントや事業・プロジェクト企画などのコトも対象です。
私が担当するデザイン・プロジェクト03では、千葉県いすみ市と大多喜町を走るいすみ鉄道(https://isumirail.co.jp/)をブランディングするプロジェクトが進行中です。地域の人口が減少する地方の鉄道は、もはや「地域の足」としての役割は期待できず、第三セクターによる運営が続いています。この点はいすみ鉄道も例外ではありませんが、首都圏から比較的近い場所を走るローカル線として、「地域の足」であるよりも「観光の資源」「地域のシンボル」としての期待がされています。
学生たちは3泊4日の現地合宿で地域の人々へのインタビューや観察、またいすみ鉄道を巡る地元の方や首都圏からの方々を交えたワークショップなどを通じて、いすみ鉄道といすみ市内の観光資源とをどのように結びつければいいのか、デザイン提案をしてゆきます。


空き家を利用したプロジェクトに挑戦する人々
現在、日本全国には8,489,000戸もの空き家があり、その比率は全住宅のうちの13.6%にも上ります(平成30年住宅・土地統計調査)。空き家と一口に行っても、それが都市部にあるものなのか、それとも地方にあるものなのかによって、物件の特徴(敷地や建物の面積、建築様式など)は全く異なります。中でも特に注目に値するのは、空き家の価格面でしょう。賃貸・購入のいずれの場合にも、地方の空き家の価格は都市部のそれに比べて、大変安価であるという魅力があります。
私の担当する「デザイン・プロジェクト03」では、空き家を利用して自分たちの新しい挑戦を実現している人達を取材することをテーマに、千葉県いすみ市での3泊4日の現地合宿を行いました。
空き家と人間とが共に再生してゆくプロセスを理解するプロジェクトです。
事例1:星空の小さな図書館 https://hoshizora-library.starlet.link/
農家の納屋を改修し、近隣からの本の寄贈による小さな私設図書館。小さなカフェコーナーも併設されていて、地域の方たちがゆっくり本とである空間です。長年の会社勤めを辞めて、健康的な生き方・働き方を求めて移住してきた方が実現しました。




事例2:マチノイト
元々、商店街にある簡易郵便局の建物だった場所を、ソーイングのアトリエとして運営している事例です。地元の方の着なくなった着物を譲り受け、それを洋服にデザインし直すアップサイクルや、ミシンを習って自分の好きなものを作ってみたいという方向けにミシン講習などを開催しています。
自分のアトリエとブランドを持ちたいと考えた方が、このマチノイトを実現しました。



事例3:Bamboo Base
こちらは農家の空き家を大改修して、民泊施設ならびに裏山の竹を使った竹のworkshopを開催する場所です。屋外での体験や人をつなげる様々なイベントを立ち上げたいと考えた方が、こうした空き家利用を実現しました。写真は学生たちも裏山に入って竹を切り出し、ほそく割ったものを組み合わせてついたてを作った様子です。





一過性でない若年層の地方移住(日本経済新聞 6月24日朝刊)
新型コロナウイルス禍でのリモートワーク浸透により地方移住が注目された。だがこの傾向は以前から一定数あり、中でも若年層(20~40歳代)の移住は増加傾向にある。地方移住した若年層へのインタビュー調査(2019年)を基に、若年層が都市から地方移住する理由について考えたい。
移住前の都市での暮らしについては「長時間労働」「定年までは無理」「未来が見えない」など就労継続の困難が多く聞かれた。また仕事と生活のアンバランスから「身体の不調」「家族生活との齟齬(そご)」「高い住居費や物価など高コストの生活」が挙げられていた。若年移住者にとって、就労中心の生活は将来への見通しや安心につながらず、都市生活への疑問となっていた。
次に移住後の職業は、①特殊技能による職業(陶芸家、助産師、猟師)②ウェブ環境により就労地の制約がない職業(ウェブデザイナー、デザイナー)③地域資源と密接に関わる職業(農業、グランピング経営、チーズ工房運営)④安価な不動産を利用した起業(カフェ経営、宿泊・飲食業経営、シェアハウス経営、ペットホテル、ホース・セラピスト)――など、いずれも地方居住が不利に働かないものである。また多くが被雇用者から事業主へと就労スタイルを変えており、結果的に「仕事時間のコントロール」「時間のゆとり」を実現していた。
また彼らは地方居住に可能性や価値を見いだしている。第一に地域資源への視点がある。空き家・空き店舗・古材・廃材などのモノ、野生動物・竹林などの天然資源、里山・里海などの景観、祭り・伝統工芸・地場産業などのコトは、いずれも「そこにしかない資源」と映っている。第二に新しい働き方(短い通勤時間、家族のそばで働く、必要以上に働かない)の実現。第三に子育て環境としての可能性(ほとんどない待機児童問題、豊かな自然)。第四に起業・事業運営における低コスト・リスク分散(安価な初期投資や運営の低リスク)が指摘されていた。
若者にとって地方移住とは、都市とは異なる仕事・暮らし・人間関係の再構築である。コロナ禍の一過性のものではなく、注目していく必要があるだろう。

災害被害者とパーソナル・ネットワーク
私は今、1年間の研究休暇をいただき、アメリカ合衆国フロリダ州にある南フロリダ州立大学(University of South Florida)で研究・調査活動をしています。私のここでの研究・調査の課題は、災害被害に対していかに人々が自分の身の回りの人々とともに助け合いながら、回復できるのか。。。この災害への回復力のパターンを調べるのが目的です。(「災害回復におけるパーソナル・ネットワークの役割」(Role of personal network on resilience))
今日の地球温暖化現象による災害は、ここフロリダに限ったことではありません。(米国内だけでも乾燥による山火事や竜巻、また冬の大寒波など多くの自然災害があります。)日本など他国に目を向けると、地震・津波・水害・土砂災害・火山噴火・台風・・・など、災害にはさまざまなものがあります。
このように災害には決して同じ状況のものはありません。また台風やハリケーンのような予測可能なものもあれば、ある日突然発生する災害もあります。しかし災害はひとたび起こってしまえば、誰もが回復する方向に舵を切るしかない社会現象へとつながります。その回復の過程で、人々や地域社会(コミュニティー)には回復力の強い・弱いが歴然としてあるのも事実です。
そこでどういった社会経済的特徴の人々・地域において回復力が弱いのか、またそうした人々・地域にはどういった支援が必要なのか。個人レベルで解決できることと地域や行政レベルで解決するべきことは何なのか。こうした疑問に対してパーソナル・ネットワーク(人が持つ関係資源)の特性と回復力との関係を探っていこうとしています。
今後はハリケーン被害者へのインタビュー調査をする予定です。


*写真は所属する研究チームiCAR(initiative on Coastal Adaptation and Resilience) メンバーによるコミュニティー・ミーティングで、地域住民とのディスカッション風景と調査協力のお願いをしている風景。
週末のお昼にみなさんピザを食べながら、気軽な参加が印象的でした。
Streetの可能性
2020年。今年はコロナウイルス感染拡大という大きな出来事があった(まだ続いていますが)、大変な一年でしたね。確かにウイルス蔓延も、世界を震撼させる大事件ですが、もう一方で、今年の出来事で印象的なのは、市民がstreet(多くの場合、大都市の大通り)に出て、自らの主張をするような抗議運動・デモが多いという点です。

その一つに、米ミネソタ州ミネアポリスで5月25日、黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が白人警官から首を圧迫されて亡くなった事件をきっかけに、「BLACK LIVES MATTER(“黒人の命は大切だ”の意味)」というスローガンを掲げ人種差別撤廃を主張したデモが全米で展開されたのは、皆さんも記憶に新しいでしょう。
他にも香港の民主化運動(中国による統治に反対し、民主主義を守ろうという趣旨のデモ)やタイ・バンコクでの民主化運動(軍事政権やタイ王政への批判)なども、このコロナ禍にもかかわらず、大きな展開を見せました。

こうした政治的主張をするデモの他に、ストリート・ダンスやストリート・バスケット、またストリート・アートとしてバンクシーやバスキア、キース・ヘリングなどの現代美術を代表する作家が、ストリとを舞台に自らの作品を都市空間の中に表現してきたことも、やはりストリートの現象と言えます。
STREET ART MAP https://sniffingeurope.com/street-art-map/
さて、なぜ人はストリートに出て、遊び、交わり、表現し、そして時に、自らの主張を声高に叫ぶのでしょうか? その答えを探るには、ストリートに集う人々が決して社会の中で優遇されておらず、自らの表現の場を用意された人々ではないことがヒントになるでしょう。 Streetという、開かれ・互いに交わることのできる空間であるからこそ、社会における自分たちの表現や主張、社交をする場を与えられない人々は、ストリートを舞台に自らを表現し、主張し、遊び興じる空間としているのです。
その意味ではストリートとは、一見すると整えられた社会のなかで、閉じ込められた声が吹き出す“現代の裂け目”と言えるでしょう。
災害被災者インタビュー
大学のブランディング事業として「防災・減災・復興学研究所」があり、土木工学、心理学、情報学、社会学など幅広い分野の研究者が集まり、災害への対応の研究を進めています。
私は社会学を専門とする立場から、災害被害者のパーソナル・ネットワークとサポートの実態をテーマにインタビュー調査をしています。日本は地震・津波・台風・火山噴火・・・と自然災害の多い国ですが、私は現在、2011年3月の東日本大震災とその後につづく福島第一原発事故の被災者を対象に、インタビュー調査をしています。
インタビュー対象者の中には、ご自宅が帰還困難区域になって現在に至るまで我が家に戻れないままの方もいらっしゃいます。とかく、被災者は周囲からのサポートを受けとるばかりかと考えられがちですが、中には避難先での支援を経て、今度は自分が地域の復興に役立ちたいと近隣の方々への超えかけや集いを企画して、サポートする側になっていらっしゃる方も多いです。
まだまだ終わらない災害の復興。私たちは忘れずに応援を続けたいと考えています。

デザイン・プロジェクト3「カンボジア伝統絹絣再生プロジェクト訪問」
20年もの間つづいた内戦の歴史の中で、人の命も自然も失ってきたカンボジア。
そのカンボジアに古くから伝わる草木染めによる絹絣の織物を復活させたIKTT
(Institute for Khmer Traditional Textiles),通称:「伝統の森」の壮大なプロジェクトを体験・学習しました。
失われた人の営み、村の姿、平和な暮らし、戦火により焼き払われ、地雷が埋められた大地を開墾し、草木や森を再生し、カンボジア全土から染めや織りの技をもつ人々を募って再生したこの村。今では世界のトップブランド・デザイナーが注目するほどの質の高い布が織られています。
私たちはこの滞在を通じて、自然環境と社会環境の両輪がそろって初めて生まれる持続可能な生き方を考え直しています。



