人間共生学部創立10周年記念国際シンポジウム「日本車とドイツ車のエコカー(SDGs)動向と未来展望」報告
2026年12月6日(土)、横浜・関内キャンパス テンネー記念ホールにて、人間共生学部創立10周年記念国際シンポジウム「日本車とドイツ車のエコカー(SDGs)動向と未来展望」を開催しました。本シンポジウムでは、ドイツのチューリンゲン繊維プラスチック研究所(以下、TITK)繊維・材料研究部 部長のトーマス・ロイスマン博士を招聘して、「ドイツのエコカーと材料開発の取り組み」と題して、基調講演をいただきました。ロイスマン氏は、主に環境影響を配慮した新しい自動車材料を開発しており、ドイツ自動車メーカーとの「炭素繊維リサイクル」で成功を収めています。TITKは本学と学術交流協定を締結しており、教員との共同研究、学生への教育、文化交流を継続しています。今回、ロイスマン氏には自動車部品の持続可能な材料とプロセスの開発について講演をいただきました。「ドイツにおいては、eモビリティの開発は急速に発展しており、今後、市場に普及する見込みです。現代の電気自動車には、持続可能な材料とプロセスが必要であり、リサイクル可能な部品のための装飾材料の開発は必須である」とロイスマン氏は力説されました。さらに、同氏は、TITKで取組んでいる天然繊維やリサイクル繊維を使用した装飾材の開発、産業界との連携についても解説されました。
次の講演では、いすゞ自動車株式会社サステナビリティ推進部ダイレクターの小杉信明氏より「いすゞ自動車のSDGs活動」と題して、トラックのカーボンニュートラルに向けた取り組みについて、ご説明をいただきました。「トラック開発では、多方面からの環境負荷を考慮し、技術進展と社会動向を見ながら、商品力・経済性・ライフサイクルのCO₂排出などを試算して、脱炭素化に最適な動力源を検選定し、車両開発を推進している」と小杉氏は語りました。
最後の講演として、私(共生デザイン学科教員)より、「日本とドイツでの電気自動車の利点」と題し、電気自動車(以下、EV)の生涯走行でのCO₂排出量の実績と予測値やリチウムイオン電池交換によるCO₂排出量の試算予測、EVのリチウムイオン電池の性能向上とリサイクル化が今後の課題であることを説明いたしました。
続けて、上記3名によるパネルディスカッションでは、トラックにおける今後のEV発展の可能性について意見交換がなされました。ロイスマン氏からは「トヨタ自動車とBMWの水素燃料電池車(FCEV)分野での協力関係が良い事例で、日本とドイツは相互に発展した産業を有しており、互いに学べることがたくさんあります。よりサスティナブルな自動車開発をめざし、両国の協力が深まれば」と今後への期待が語られました。シンポジウムには、自動車業界関係者や環境問題に関心を持つ方々が200名ほど来場し、終了後にも講師との活発な意見交換が続くなど、カーボンニュートラル化に向けた最新技術と環境問題への関心の深さが見られました。


佐野ゼミナールと自動車会社との産学共同研究
佐野ゼミナールでは、本学理工学部の武田克彦研究室と協力して、いすゞ自動車株式会社と産学共同研究を2015年から継続しています。研究テーマは「トラックのLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」です。本研究のLCAでは、トラックの製造から走行、廃棄までに排出される二酸化炭素量を試算しています。
私たちは、2023年5月26日(金)に、横浜パシフィコで行われた自動車技術会春季大会で、LCA結果から「電気トラックは環境にやさしいか?」を学会で発表し、討論しました。
発表の結論を先に申しますと、現状の日本国内での大型トラック輸送は、ハイブリッド車が最も環境への悪影響が少なく、次いで、ディーゼル車でした。電気トラックはディーゼル車より環境に悪い試算結果となりました。この結果は、日本での発電では、化石燃料発電の依存度が高く、二酸化炭素排出量が大きいことに起因しています。
重要なポイントは、トラック輸送では、貨物量と航続距離、充電時間、タイミングを考えて、運用する必要があります。
下図は、大型トラックの最大積載重量を示します。青色の部分がリチウムイオン電池です。ハイブリッドとディーゼルの積載量は約15トンです。しかし、電気トラックでは、航続距離を延ばすため、5倍のリチウムイオン電池を載せて重くなるため、積載量は約半分の7.8トンになると本研究で試算されました。

例えば、鹿児島から東京までの距離は、自動車道路で約1,280kmです。この区間の電気トラック輸送では、貨物を半分の約7.5トンにして、途中で充電も必要で、運搬効率が非常に悪いことがわかります。
現在は、大型電気トラックの環境メリットは少ないですが、将来,各国で自然エネルギーを増やすなど、電源構成の改善とリチウムイオン電池の性能向上により,電気トラック使用での環境負荷の低減化が期待されます。
今後は、水素やバイオ燃料を用いたトラック走行やリサイクル・リチウムイオン電池の産学共同研究も行う計画です。
本内容は自動車技術会春季大会での発表内容に基づきます。
以上
出典
(1) 自動車技術会,ウェブサイト, 2023年春季大会, https://www.jsae.or.jp/2023haru/
(2) 佐野慶一郎, 武田克彦(関東学院大学), 久地樂昌紀(いすゞ自動車)ほか, “大型トラックのハイブリッド化とBEV化のLCA比較”, 講演No.233,春季大会講演要旨5頁, 2023年自動車技術会春季大会.
佐野慶一郎ゼミナールでの国産クラッシック車の修復作業
佐野ゼミナールの学生活動として、2020年度より、理工学部と共同で、国産クラッシック車(写真1)の内装部品の修復作業を進めています。2021年度は、このクラッシック車内装表皮材料の歴史調査を行い、実際に、近似の内装材を入手して、切断加工と張り替えの作業による内装部品の修復を行いました。
修復前後の前席シートを写真2と写真3に示す。修復前後のドアパネルを写真4と写真5に示します。
苦労した点として、まず、専門家(自動車修理業者)の意見を得て、当時(1938年)の自動車に適した素材(シート表皮用、塩化ビニル)を選びました。そして、日産自動車記念車庫とトヨタ博物館収蔵車、個人所有車、カタログ等の資料に基づき、シートをデザインしました。、修復作業は、専門家の指導を受けながら、シートビニルの伸縮性を考慮し、型紙からのシート材を裁断し、縫製を行い、完了させました。





今後、さらに、このクラッシックカーの修復を理工学部と一緒に進め、学外へ公開していきます。そして、車の修復を修了させて、レース場を借りて、ゼミ生らによる記念走行を行う予定です。
ゼミナールテーマ「未利用資源の利用」
地球環境保全の観点から、「未利用資源の産業利用」が求められています。佐野ゼミナールでは、さまざまな未利用資源の中から産業利用にできるモノを探索して、実用化すべく、「商品企画と研究実験」を主テーマとしています。未利用資源の利用は、SDGsの17目標の中で、12番の「つくる責任、つかう責任」に適う行動です。
植物廃棄物を原料利用した製品の事例を下表に示します。以前から、第一製品の生産で生じた廃棄物を原料利用して、第二の製品を生産する事例があります。
植物廃棄物を原料利用した製品の事例

ペットボトル用の緑茶や烏龍茶を煎じる工場では、「茶殻」が廃棄されます。茶殻には、植物ポリフェノール類の「カテキン類」が多く残存します。
白ワインをつくる工場では、葡萄から種子が除去され、廃棄されます。「葡萄の種子」には、「アントシアニジン」が含まれます。
一部、茶殻と葡萄種子から植物ポリフェノール類が抽出され、健康食品や消臭剤に利用されています。
ドイツには、亜麻を栽培し、油をつくる産業が盛んです。亜麻仁油をつくる工場では、刈入れた穂から種子が採取され、茎は廃棄されます。「刈入れ茎」は、ほぐされ、マット状に加工され、ドイツ車室内の座席や板材に利用されています。
日本には、荒れた竹林が多く、伐採した竹が多く廃棄処分されています。高級な日本車室内の板材やスピーカに竹材を利用した事例があります。また、コットン「古着」はリサイクル回収され、ほぐされ、マット状に加工され、日本車室内の吸音振材や建築資材に利用されています。
佐野ゼミでは、上記の事例を踏まえて、「未利用資源の産業利用」に関する以下の研究を継続しております。多くの方々に、興味を持っていただければ幸いです。
1.植物ポリフェノール類を利用した植物繊維の消臭化
ポリフェノール:緑茶や葡萄、どくだみなど
繊維:亜麻、コットン古着、竹、ケナフなど
WO2011-071121号 天然繊維含有プラスチック製造用複合材料及びその製造方法、並びに天然繊維含有プラスチック及びその製造方法 – astamuse
2.竹繊維と廃棄プラスチックとの複合材・製品
教員コラム – 関東学院大学人間共生学部 (kanto-gakuin.ac.jp)
プロジェクト科目でのドイツ・イタリア研修(短期)報告と今後について
共生デザイン学科の2019年度のプロジェクト科目の一環として、2019年9月8日から10日間、学生8名とドイツ(ルードルスタッド、フュッセン、ミュンヘン)、イタリア(ミラノ、フィレンツェ)を訪問しました。
本海外研修の主目的は、本学の学術協定先であるドイツTITK研究所(ルードルスタッド)との研修でした。学生たちは、「日本の文化と歴史」について、各自のテーマを決め、ドイツの研究者の前で、英語でプレゼンテーションを行いました。今回のテーマは、日本刀、食のフェスティバル、漫画、若者の化粧、お花見、着物、和菓子、ランドセルでした。真剣な学生の発表に対して、ドイツの方々より、質問と助言を頂くことができました。学生の多くは、外国でのプレゼンテーションは初めての経験で、冒頭、緊張していましたが、ドイツ流の挨拶やマナーを実体験できて、勉強になったとのことでした。また、学生たちは、イタリアにて、数々のキリスト教会の美しさ、街との調和、人々の信仰の深さに感銘を受けていました。
今年の夏休み前に、プロジェクト科目(オンライン)で、「世界で、コロナウィルスの感染が拡大した要因」について、議論しました。学生からの多くの意見が挙がり、整理すると以下の9項目にまとまりました。
- 飛行機など交通網の発展
- 人々の贅沢な生活
- 貧困による不衛生
- エチケットに関する低いモラル、規律、教育
- 地球温暖化など、環境破壊による生態系の乱れ
- 薬物や抗生物質の不適切な開発または使用
- 遺伝子組み換え品の普及
- 一部の国での情報操作やコミュニケーション不足
- 一部の国での政治指導者による誤った政策
毎年、夏休みに、実施している、ドイツを含む欧州の短期研修は、今年度は、来年2月に延期としました。しかし、この研修は、コロナウィルスの感染が収束しない限り、来年も難しいかもしれません。この状況に対して、海外での学びを待ち望んでいる学生たちは、残念な思いとのことです。しかし、学生たちは、感染拡大の要因として、飛行機を含む交通を第一に挙げて、自身の行動責任を良く理解しており、研修中止も覚悟しているとのことでした。感染拡大の影響によって、今年度の大学生は、学習やサークル部活動、就職活動、アルバイト等々に大きな影響を受けています。私は、学生たちの支えとなり、一緒に困難を乗り越ようとの意思疎通のもと、授業とゼミナール研究を進めている最中です。




点滴の包装ポリ袋が箸やコップに
病院で生じたごみは、二次感染を防ぐため、多くは焼却処分されています。病院のごみには、高品質なプラスチックが多く含まれています。感染の恐れのないものもあり、まだまだ使えるものがあります。
これら病院のごみ資源を有効に活用できないかと考え、国立国際医療研究センター病院や大学、公設研究機関、企業などでつくられたのが(一社)医療の環境負荷低減研究会であり、さまざまな調査研究に取り組んでいます。
佐野ゼミもこの研究会の中心メンバーで、非感染性の廃プラスチックを利用した箸やコップなどのリサイクル食器を本学理工学部と共同で開発し、2018年度から本学の売店で販売を開始しました。
材料は、同病院から出る点滴の包装ポリ袋(非感染性廃棄物)と本学で回収したペットボトルのキャップ。これらを協力先の㈱ユニオン産業(川崎市)が独自に開発した「ユニペレ」と混合しました。
「ユニペレ」とは、竹短繊維を主成分にした有機物で高い抗菌性と燃やしても有害物質が出にくいのが特長です。製品の4割を2種類の廃プラスチックと廃竹材で占めています。
ゼミでは、当面、このリサイクル食器の販売を学内で継続していきますが、今後、病院内での販売や使用も検討していきます。なお、医療機関から出る廃プラスチックは、ほとんど資源化されておらず、新たな用途開発も重要課題であり、これについても研究を進めています。
ゼミ生たちは「単に商品を販売するだけでなく、私たちの取り組みの重要性を理解してもらうきっかけにし、仲間を増やしたい」と思い、活動を進めています。
出典:関東学院大学プレスリリース2018年3月19日、http://www.kanto-gakuin.ac.jp/?p=7563


「テクニカルショウヨコハマ2018」にて、佐野慶一郎ゼミナールの研究を紹介
2018年2月7日(水)~9日(金)、みなとみらいのパシフィコ横浜で行われた
第39回工業技術見本市、「テクニカルショウヨコハマ2018」に関東学院大学が出展しました。
「テクニカルショウヨコハマ2018」は神奈川県下最大級の工業技術・製品総合見本市で、県内産業の発展と経済の活性化を
めざし、技術・製品の販路拡大、ビジネスチャンスの創出、地域産業の振興を図ることを目的としています。
関東学院大学のブースでは、人間共生学部共生デザイン学科の佐野慶一郎ゼミナールのテーマ「薄オゾンナノバブル水での有機物分解と消臭」の研究に関するパネルが展示され、建築・環境学部からは、建築物のライフサイクルマネジメントに関する様々な研究のパネルが展示されました。
佐野ゼミナールでは、昨年、金沢区の鳥浜工業団地における廃棄物処理に伴う臭気の問題改善のため、オゾンナノバルブ水を使用する実験を行っており、ブースでは、その結果を中心に解説しました。あわせて、「人体に影響のない物質で、比較的経費が押さえられるオゾンナノバルブ水はどんなものでも安全に洗浄ができます。病院などで使用される医療器具、貝などの生の水産物の表面の殺菌など、あらゆる場面でその効果が期待されます。まずは、洗浄したいものがあれば、何でも相談してください。」と説明をしたところ、多くの企業から問い合わせを頂き、後日、協議することになりました。
企業との共同研究を増やしていきたいと考えています。
ブースでの説明を担当した、井上匠さん(人間環境学部3年)は、「自分の研究について説明漏れが無いように丁寧に説明することを心がけました。特にごみ集積場での実験についての質問が多かったですね。これから、もっと広い分野でこの研究を生かしていくことができたらと思います」と振り返りました。
佐野ゼミナールでは、産官学連携によって、地域の環境問題、環境改善のための研究を行い、実用化を目指していきます。
