解像度を高める

先日閉幕した大阪・関西万博に行ってきました。
イベントやパビリオンなどの華やかな話題はニュースやメディアで数多く報じられているので、ここでは実際に行ってみて感じたことを書こうと思います。

万博の象徴的な建築物であり、世界最大の木造建築物として認定された大屋根リングを見ていると、エレベーターが設置されていることに気がつきました。

大屋根リングにエスカレーターがあるのは事前にメディアで見かけていましたが、エレベーターがあれば様々な人が万博会場を上から眺めて楽しむことができます。実際に上から会場を見てみると大屋根リングの高さを体験できて、映像で見た時とは全く異なる印象を持ちました。

今は動画配信サイトでも4Kが当たり前となり、自宅にいながら高解像度の映像を楽しむことができますが、実際に現地を歩いてみると「どのようなものがあるのか」や「スケール感」といった、解像度の高い情報を得られるのだと感じました。

チャンスのつかみ方

学科Instagramでも紹介しましたが、私が工学部に所属していた時の卒業生の、小林健太さんの記事がCGWORLDに掲載されました。

新・海外で働く日本人アーティスト
https://cgworld.jp/regular/100-kobayashi.html

小林さんは現在、オランダにあるSonyのPlayStation StudiosのGuerrilla Gamesで、Senior VFX Artistとして活躍されています。
PlayStationのゲーム『Horizon Forbidden West』ではエフェクト制作等を担当しました。

『Horizon Forbidden West』の紹介映像はこちら。
ストーリートレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=nODVIB9tKkk

…というのが学科Instagramで紹介した内容で、ここではもう少し詳しいお話をしたいと思います。
小林さんは学生の頃から色々な作品を制作していました。また、卒業研究の発表会でもプレゼンテーションの方法を工夫するなど、作品の見せ方でも「面白い事をしたい」という意欲を持っていたように私は思いました。
ちょうどその頃、ゲーム制作会社に勤める私の知人から「スタッフを増やしたいんだけど、良い学生居ないかな?」という相談がありました。その時に小林さんの事を思い出して知人に紹介し、面接を受けてもらいました。
小林さんは無事に面接に合格し、会社で様々なゲームのエフェクトの制作を行い、その後はCGWORLDの掲載記事のような活躍をしています。

このように、私のゼミで普段制作を頑張っている学生が、何かのきっかけで制作にかかわる業界に就職する事はよくあります。
例えば、就職活動で会社説明会の時期が迫ってきてから業界や会社について調べたり、課題制作の締め切りが近づいてから作業を始めたりする学生も居ますが、普段から努力を続けている人の方が、何かのチャンスが来た時に良い結果を出せているように私は思います。

世界を旅する作品

先日、私の制作した映像作品「inner Ray」が、London International Animation Festival という英国最大の国際アニメーションフェスティバルで上映されました。

映像作品「inner Ray」より

London International Animation Festivalの作品紹介ページ
https://liaf.org.uk/liaf-2023-article-abstract-showcase

「inner Ray」のYouTube動画
https://youtu.be/r53GL0ivKBU

大学教員が研究成果を発表する場としては学会や論文などがありますが、私の場合は作品制作も行うので、コンテストや展覧会でも発表をしています。
展覧会などの会場が近い場合、私自身が会場に滞在して、来場された方から作品の感想を伺ったり、制作意図などの説明を行ったりする事ができます。様々な方とお話をしているうちに視野が広がり、新しい作品のアイデアを思いつく事もあります。
一方で、海外の映画祭や展覧会は会場に行く事が難しい時もあるので、作品をご覧になった方と直接お話する機会が無い場合もあります。しかし、今回の映画祭では作品紹介ページに私の作品へのコメントが掲載されていて、間接的にご意見を伺う事ができました。
私自身が直接ロンドンに行くのは大変ですが、作品のデータだけであれば様々な国に簡単に行けます。私の代わりに作品が世界中を旅する事で、様々な人に作品をご覧いただけます。

Instagramはじめました

昨年の6月から、共生デザイン学科の公式Instagramアカウントを開設しました。
こちらのアカウントでは、学科や学生の活動を主に紹介しています。
https://www.instagram.com/kgu_symbioticdesign/

Instagramは写真系のSNSで、私の専門分野の一つが写真加工や写真合成という事もあって、アカウントの管理は主に私が行っています。
SNSのアカウント運用は私の専門分野ではありませんが、デザインや映像表現を学ぶ中で企業の公式アカウントやインターネット広告などに触れる機会がありました。その際に、興味深いと感じる公式アカウントや投稿を見かける事もあり、SNS運用自体には興味がありました。

今回のInstagramアカウントの運用をきっかけにして、ハッシュタグについて調べたり、大学近辺がアニメの舞台になった時には「聖地巡礼」の写真を投稿したりと、SNSならではの表現方法について勉強する事が出来ました。
最近は、1枚の横長の写真を3枚に分割して投稿するという手法を試してみました。普段の展示であれば作品を分割する事には抵抗があるのですが、SNSでは一般的に行われている手法ですので、こうした機会に様々な表現を積極的に取り入れていきたいと考えています。

 

 

視野を広げる

私は以前、東北の大学に勤務していて、東京に来る用事がある時には美術館を見て回って、様々な作品から刺激を受けていました。本学に勤務するようになってからは、首都圏にある美術大学の卒業制作展も見て回るようになりました。

大学では4年間の学修の集大成として卒業研究で論文執筆などをしますが、美術大学では作品を作って卒業制作として発表する場合もあります。

私自身も芸術大学出身で卒業制作をしていたのもあり、首都圏の大学の卒業制作展には以前から興味がありました。

 

卒業制作展では、絵画や彫刻、建築模型や製品デザイン、写真やゲームなど、その大学で学べる全ての分野の作品を見る事が出来ます。作品のサイズや、額の色や材質(木や金属など)といった展示方法も学生自身が考えて構成しているので、展示空間の雰囲気も個性的です。

私の担当する授業では展覧会の企画と運営を行っているので、私自身が卒業制作展を見て学んだ会場構成や展示方法などのノウハウを、授業で学生に伝えています。

私の授業での展覧会の様子は、下記の記事からご覧いただけます。

https://univ.kanto-gakuin.ac.jp/topics/20210226-0001.html?fbclid=IwAR23I6uV7MYoDzyeK-AhkwLqepiF3rkfOj0ZR46knhJilKWc_0TcWfr3zlg

卒業制作展に出品される作品は、学生が自由にテーマを決めていますので、鑑賞を通して様々な発想や考え方に触れる事が出来ます。また、制作に使用している技術も様々なものがあり、今の学生が興味を持っている技術や、作品制作に使われ始めている新しい技術などを知る事も出来ます。

これから社会でデザイナーやアーティストとして活躍していく学生が興味を持っているテーマや技術というのは、業界の主流になっていく可能性もありますので、ある意味では最新情報に触れているとも言えます。

制作を行う上での視野を広げていくために、世間に発表されて高い評価を受けている作品を数多く鑑賞する事はもちろん大切ですが、学生の作品に触れる事で見えてくるものもあるのではないかと思います。

視点の置き方

外出の難しい時期が続いていますが、菜の花と桜が近所で咲いていたので、少しだけ写真を撮影しました。

花は1年に1度、限られた期間だけ咲きます。私が写真を撮り始めたのは20年ほど前からで、その20年の間に転職などで引っ越しもしているので、神奈川で花を撮影したのは10シーズンも無い位の初心者と言えます。

そのような経験の浅い私にとっても、少し不思議に感じる光景をここ数年見かける事があります。散った桜の花びらではなく、花がそのまま地面に落ちているのです。

上を見上げると、スズメなどの鳥が桜の蜜を吸う時に、花を千切って落としているようでした。花は地面に落ちている事が多いのですが、桜の下に咲いている菜の花の上に乗っている事もありました。

私は花を撮影する時、どうすれば花の美しさを表現できるか考える事が多いです。被写体の形や色、表面の質感といった様々な要素の中から、自分が魅力を感じた部分を引き出すように撮影するのが、写真による表現方法の一つだと私は思います。

そうした経験から、写真作品を制作している学生と話をしていると「被写体のどこに魅力を感じたのかを考えながら撮る」といった話題がよく出ます。

一方で、菜の花の上に乗った桜を「菜の花と桜」という一つの被写体としてとらえると、菜の花だけ、桜だけを撮る時とは違った物の見方が出来たように思いました。

桜の花が菜の花の上に落ちたのは偶然に過ぎませんが、そうした時に新しい視点を見つけ出していく事も、デザインや表現を行う上では大切なように思います。

 

 

 

小林研と小林ゼミ

人間共生学部 共生デザイン学科の1期生が卒業していきました。みなさん、ご卒業おめでとうございます。4年前の私は理工学部に所属していて、共生デザイン学科の開始と同時に授業を受け持つようになったので、1期生の卒業は感慨深いものがあります。

そして、理工学部の映像クリエーションコースで最後の代となる学生も卒業していきました。私は映像クリエーションコースの小林研究室も担当していたので、人間共生学部と理工学部の二つのキャンパスを往復する生活が終わり、研究室も片付けてホッとしている一方、二つのゼミを掛け持ちしていた密度の高い日々を懐かしく感じます。

私が関東学院大学に来たのは2009年で、当時の学生は私自身の専門でもあったコンピュータグラフィックス作品を制作していました。その後、学生がやりたいと言った事は大抵OKしていたので、写真やアニメーションを制作する学生も増え、さらには音楽やVFXを制作する学生が出てきたり、ゲーム制作が流行したりと、何でもする研究室になりました。

大学は自由な場なので「自分の作品だから作りたいものを好きに作って良い」と授業でよく話していた一方、「大学の授業成果として発表できるような高いクオリティに仕上げる」ということも伝えてきました。

作品や技術力が認められてゲーム会社やデザイン会社に就職した卒業生も何人か居て、とある大作ゲームのスタッフロールで卒業生の名前を見た時に、こういう形での再会も良いものだと思いました。

今年度は全国規模のコンテストで学生が入賞するなど「小林研」は10年間でずいぶん成長したと実感しました。

2019アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA(学生/動画部門・入賞)

https://adaa.jp/ja/winners/winners2019.html

 

作品は下記アドレスからご覧いただけます。

「AQUA TRAVEL」作者:星 賢太

 

そして現在、共生デザイン学科の小林ゼミナールではデジタルイラストを制作する学生が増えてきて、これまでとは異なる方向性の作品を見る事ができそうです。

先日、教室の入れ替えがあり、このタイミングで小林ゼミナールのゼミ室もリニューアルしてコンピュータ環境や参考書を充実させました。

ちなみに、理工学部では3、4年生は「研究室」に所属して研究室で作業を行い、共生デザイン学科では「ゼミナール」に所属してゼミ室で作業を行います。

「小林研」から「小林ゼミ」へと一つの時代の区切りを迎え、新しい時代への期待が高まります。

 

 

撮ることと、作ること

私の専門はコンピュータグラフィックスですが、色彩や構図の勉強も兼ねて、普段からカメラを持ち歩いて写真撮影をしています。

見渡す限りの紅葉の中、緑の葉を見かけたので、メインの被写体と背景で色を組み合わせました。

このような構図に偶然出会えることもあり、発想を広げるきっかけにもなります。

写真は撮るだけでも勉強になることが多いのですが、加工によって表現の幅を広げることもできます。

これは私の授業で使用する写真で、最近はスマートフォンでも可能になったHDR撮影によるものです。HDR撮影は、暗い写真と明るい写真を合成して、暗い部分も明るい部分も見えるようにする技術で、上記の写真では夜にもかかわらず雲が見えています。

授業では、コンピュータで色を調整してレンガの赤色と空の青色を強調していきます。このような色彩は現実世界ではありえませんが、表現としては面白いのではないかと思います。

私の1年生の授業では、コンピュータの力を借りると面白いものが作れることを体験していきます。

「いつの間にか役立っている知識と経験」

2016年度までは主に理工学部の映像クリエーションコースの授業を担当していましたが、2017年度から人間共生学部共生デザイン学科の所属になりました。
そこで今回は自己紹介も兼ねて、私の作品についてお話しします。
最初はコンピュータグラフィックス、いわゆる3DCGを使ってアニメーションを制作していました。そのアニメーションにBGMや効果音をつけるために、作曲の勉強もしていました。
音や楽器についての知識を学んでいくうちに、音と映像の技術を組み合わせた作品を作ってみたいと思うようになってきました。この「spread note」という作品では、音と同時にラインが現れるのですが、ピアノの鍵盤のように低い音を左、高い音を右に配置しています。

http://www.k-kobayashi.info/movs/hd_spread.html

BGMを作るために作曲を勉強していたのが、いつの間にか作品制作の中心になっていきました。

もう一つ、別のお話をします。私は構図や色彩の勉強も兼ねて、普段からカメラを持ち歩いて写真撮影をしています。
花火大会の写真を撮ることに凝っていた時期があり、もっと綺麗に撮るにはどうしたらよいか、と考えているうちに数千枚の写真を撮影していました。
撮影した写真を眺めているうちに、映像の合成技術を使えば何か面白いことができるような気がしました。
そうして完成したのが「Syu-No-Kou」という、花火によって鳥と蝶を描いた作品です。

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メイキングはこちらです。
http://www.k-kobayashi.info/mak_syuno.html

「花火で絵を描く」という発想は、写真を撮り始めた時には、もちろんありませんでした。しかし、写真を撮っていなければ「Syu-No-Kou」は生まれなかったことでしょう。

知識や技術というのは、勉強を始めた時には思いつかないような形で役に立つこともあるようです。
大学では、自分の将来や興味に関わる分野以外にも色々な授業があるので、「いつか役に立つかもしれない知識」をたくさん学んでいくと、新しい発見や発想に出会えるかもしれません。

小林 和彦(共生デザイン学科)