教員紹介

人間共生学部教員コラム vol.72

2011.05.12  兼子 朋也

大山詣り(おおやままいり)

私はこの4月に関東学院大学に参りましたが、それ以前の10年間は鳥取県米子市に住んでいました。米子のそばには中国地方の最高峰である大山(「だいせん」、伯耆富士とも呼ばれる。標高1729m。)が美しい姿でそびえています。その山は、見ると不思議な安心感を与えてくれる存在で、山の色でもって季節の移ろいを知らせてくれる、山陰の人々の心と生活にどっかりと腰を下ろした、まさに大きな山でした。私は紅葉の大山に登って、山頂からの素晴らしい景色、そして大きな達成感を味わってからというもの、山登りにはまっています。世間でも山登りがブームのようです。中高年、さらには「山ガール」と呼ばれるファッショナブルな山用ウェアに身を包んだ女性の愛好家も登場して、健康志向・自然志向の時代を反映してか、ますます多くの人がより気軽に山登りをするようになっています。

 

 

そこで、GWに早速ですが、神奈川県伊勢原市・秦野市・厚木市にまたがる大山(標高1252m。)に登ってきました。「大山」と同じ漢字を書きますが、こちらは「おおやま」と呼びます。丹沢山塊の南東に位置し、別名を雨降山。雨を降らせてくれるとってもありがたい山として、古くから信仰を集めてきました。心地よい汗をかきながら、大山の山頂にたどり着きましたが、多くの人で賑わい、誰もが晴れ晴れと気持ちよさそうな表情を浮かべているのが印象的でした。山頂には阿夫利神社奥の院が置かれ、眼下には湘南の街と海が広がり、なかなか素晴らしい眺望でした。(少し曇っていたため、晴れた日には見ることができるという新宿のビル群やスカイツリーそして富士山が見えなかったのは残念でしたが・・・。)

 

 

「おおやま」は、江戸(日本橋)から7、80kmの距離にあり、江戸時代に大流行した「大山詣り」(夏場に庶民が仲間内とグループを組んで何日もかけて参詣する信仰と娯楽の一大行事)の目的地で、今でも関東近郊の人気の観光地です。江戸時代の「大山詣り」は、お詣りというのは建前で、仲間と連れだっての物見遊山と宿場でのお楽しみも大きな目的だったようで、今でいうとグループ観光・宴会ツアーといったところでしょうか。現在の車や飛行機を用いた旅行との大きな違いは、江戸から大山まで自分の足で何日もかけて歩くツアーだったことです。徒歩ですからそれほど移動距離が多くはないものの、ゆったりと大らかに道中を楽しむ旅だったのではないかと想像します。落語にも「大山詣り」という噺があります。お山でのお詣りも無事に済ませて、帰りに起こる出来事が噺の中心なのですが、道中や当時の観光スポットの様子が窺い知れて楽しめます。(余談ですが、この噺では、関東学院大学のある金沢八景も風光明媚な観光スポットとして登場し、噺の重要なカギとなります。)

 

 

そんな大山に登ってお詣りをして、すがすがしい気分を感じながらも、最近起こった未曾有の天災と想定外といわれる事故のことが頭の片隅から離れることはありません。これを機に、科学技術とエネルギーの適切な使用、それに伴うライフスタイルの改変が求められることでしょうが、「大山詣り」とそれを生み出した江戸の暮らしの中に、問題解決の糸口が少なからず隠されているように思われます。それは再生可能なエネルギーのみを用いながら、今より極端にエネルギー消費の少ない江戸の暮らしの中にも、人間らしい娯楽や喜びがあふれ、多少の不便さも楽しみに変えてしまう知恵があったということではないでしょうか。

 

 

この夏は節電が当面の大きな課題です。山登りについていえば、それは電気エネルギーを使用しない、自分自身がエネルギー源の遊びで、かつ苦労を喜びに変える遊びです。自然に親しみ健康にもよい、人にも環境にも優しい遊びだと思います。この夏は、ゼミの学生と、冷房の効いた室内で頭を使ってお勉強するのではなく、涼しい山にでも登って、当面の節電に努めながら、江戸の庶民のことに思いをはせて、この先の暮らしについて足を使って考えてみようと思っているところです。できれば、「お山は晴れで、山を下りても、おけがなく、おめでたい。」(※注)といきたいものです。原発にも日本にも同様に、これ以上の「お怪我」のないことを心より願っております。

 

 

(※注 噺のオチの部分:興味のある人は落語を聴いてみてください。)

 

 

兼子 朋也(共生デザイン学科)

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