教員紹介

人間共生学部教員コラム vol.222

2017.08.09 コミュニケーション学科 道幸 俊也

「シリコンバレーに身を置く」

シリコンバレーという地域、ご存じだろうか。米国は西海岸カリフォルニア州のサンフランシスコから南へフリーウェイで約1時間走った地域である。もしシリコンバレーという名称を聞いたことがない人でも、iPhoneやFacebookは耳にされたこともあるだろう。そう、これらの本社であるAppleの本社などIT関連の有名企業が多く、起業家を多数輩出している地域で、スタンフォード大学もこの地域にある。

私はこの地域に20年ほど前になるが、約3年間人材ビジネスで日本の関連会社から出向していた。当時はネイティブの米国人を見かけるよりも、中国人やインド人のエンジニアの方を目にする機会が多かったのではないかというくらい米国を感じない地域だった。日本にいる知人や同僚からは羨ましがられることもあったが、住むと旅行とでは大いなる違いがある。例えば、公共料金を支払う場合、日本では当たり前の銀行自動引き落としがある。もちろん米国でもその制度は当然あるものの二重引き落としが発生していた。その都度銀行に問い合わせをせねばならず、本当に面倒な作業が赴任当初は連続の日々だった。現地に長い日本人に言わせると、チェック(小切手)で支払うのが一番安全で、面倒でも請求書を発行してもらう方が良いとアドバイスをもらったものだ(それでも時々二重引き落としになっていないか、確認しないといけなかった)。

さて、このシリコンバレーに滞在していたことは、自分にとってどのような意味があったのだろう。確かに生活の便利さ、そしてよく言われる安全性は日本の方が素晴らしい。もちろん言葉の不自由さも日本はない。しかし、それ以上に得るものが多かったように振り返ってみると実感するのだ。その中でも自分に大きな影響を与えたエピソードをひとつ紹介したい。

この地域の人たちはとにかく「自分の身は自分で守る」を実践していて、必要なことは日本人のように周囲の体裁を気にすることなく取り組んでいる。そこで、このようなことがあった。所属していた企業に70歳を迎えようとするリクルーターがいた。彼は、ある時期になって終業時間の17時前になると、小脇に分厚い本を抱えてそそくさと帰っていった(管理職以上は残業するが、役職に付いていない場合は逆に早く帰らないといけない)。あまりにも続くので気になって聞いてみたのだ。

 

「いつも本を抱えて帰っているけど、どこに行ってるの?」

 

「会計のクラス(授業)をとりに行ってるんだよ」(母校スタンフォード大学)

 

「どうして会計?」(てっきりこの年齢から転職するのかと思った)

 

「仕事で必要だからさ。なんでそんなことをいちいちお前に聞かれないといけないんだよ」

 

必要だからやる。躊躇することなく、取り組む。この彼の姿勢は、日本人だと「そんな年齢になって今さらそんなに頑張らなくても」という声が周囲から聞こえそうだが、そんなことは一切関係なく取り組む姿に受けたショックは大きいものだった。彼の当たり前に実践している「自分の身は自分で守る」という姿勢が今の教員になる経緯に大きな影響を与えている。

必要であればなり振り構わず取り組める姿勢、50歳を超えてからの大学院での学びは自分にとってまさにそうだったかもしれない。中には嘲笑されることもあった。「何をいまさら」「そんな年になって何がしたいの?」逆にこういう声が自分を発憤させたのも事実である。結果として自分の殻を破る機会にもなった。もし本気で成長していきたいという思いがあるのであれば、必要ならば年齢など関係なく一歩踏み出してみてはどうだろうか。プラスになることはあってもマイナスになることはないように思う。ただ、それも自分の捉え方次第ではあるのだが。

 

 

道幸 俊也(コミュニケーション学科)

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